ガムやチョコの原材料表示で、「増粘剤(アラビアガム)」という文字を見かけることがあります。
「アラビアガムは危険」「アレルギーが出る」という話を耳にして、気になっている方もいるのではないでしょうか。
- 名前からして体に悪そう
- 毎日のガムで量が心配
- アレルギーが出ないか不安
- どの食品に入っているか知りたい
そこで、国内外の公的機関の評価と、人が実際に食べた試験の数字を調べ、アラビアガムの正体を確かめました。
結果、アラビアガムの中身は9割以上が水溶性食物繊維で、同じものが「アカシア食物繊維」として1日5gの目安で売られていることが分かりました。
添加物だから避けていたのに、サプリと同じものだったんですか?
ええ。避けた分の食物繊維を、お金を出して買い戻している人もいるかもしれません。
- 危険と言われる4つの理由
- アラビアガムの正体と体の中での行方
- 食品・サプリ・試験の量の比較
- アレルギーと入っている食品
使う資料は、既存添加物名簿、消費者庁の表示ルール、国際機関(JECFA)と欧州食品安全機関(EFSA)の評価です。
まずは、なぜ「危険」と言われるのかから見ていきましょう。
アラビアガムが危険と言われる理由


アラビアガムは、ガムやチョコ、グミなどに使われている添加物です。とろみをつけたり、成分が分かれないように保ったりする役目があります。
「危険」と言われる理由をたどると、4つに分かれました。どれも中身が見えないことからくる不安で、量が多くて体に害が出たという話ではありません。
カタカナの添加物って、それだけで身構えちゃいます。
名前のイメージと中身を、1つずつ切り分けていきましょう。
添加物として表示される
アラビアガムは、食品表示では添加物の欄に書かれます。原材料名の「/」より後ろに並ぶので、合成の化学物質と同じものだと受け取られがちです。
実際には、木の樹液を乾かして粉にしたもので、化学的に合成したものではありません。
「/」の後ろにあると、化学物質みたいに見えます。
中身は木の樹液を乾かした粉です。表示の場所だけで判断しないことが大切です。
名前がまとめて書かれる
とろみをつける添加物を2種類以上使うと、「増粘多糖類」とまとめて書けるルールがあります。
このとき個別の名前は表に出ないため、何が入っているか分からないという不安につながっています。
「増粘多糖類」だと、何が入っているか分からないですね。
2種類以上を使ったときのまとめ書きです。アラビアガムが入っていても名前は出ません。
お腹がゆるくなるという話
「たくさんとると下痢やガスが出る」というのも、よく見かける話の1つです。
これは食物繊維に共通する性質です。人が1日30gを食べた試験でも、出たのは一部の人のおならの増加でした。くわしくは後の章で紹介します。
食物繊維なら、お腹がゆるくなるのも分かる気がします。
ほかの食物繊維と同じ性質です。1日30gでも、出たのはおならくらいでした。
アレルギーの話
アラビアガムでアレルギーが起きたという報告も、不安の原因になっています。
ただし報告の多くは、工場や印刷所で粉を毎日吸い込んでいた作業員のものです。食べた場合とは条件が大きく違います。
食べたときと、吸い込んだときではちがうんですね。
報告の多くは、毎日粉を吸い込んでいた作業員のものです。
アラビアガムの正体は食物繊維


では、アラビアガムとはそもそも何なのでしょうか。
国の名簿と海外の資料をたどると、木の樹液からとれる食物繊維のかたまりという姿が見えてきました。体の中では、小腸で吸収されずに大腸まで届き、腸内細菌のエサになります。


樹液って、メープルシロップみたいなものですか?
近いですね。ただ、甘い糖ではなく、消化されない繊維が主成分です。
マメ科の木の樹液
既存添加物名簿では、アラビアガムは「マメ科アラビアゴムノキ又はその他同属植物の分泌液を、乾燥して得られたもの」とされています。
アフリカのサバンナに生える木で、幹の傷から出る樹液が固まったものです。別名は「アカシアガム」で、表示では「アカシア」と書かれることもあります。
「アカシア」と書かれていたら、同じものなんですね。
はい。アカシアガムという別名で表示されることもあります。
中身の9割以上が食物繊維
アラビアガムの主成分は、水に溶けるタイプの食物繊維です。原料を扱うメーカーは「水分を除いた固形物中、90%以上の水溶性食物繊維」と表示しています。
米国食品医薬品局(FDA)も2021年、アラビアガムを食物繊維として認めました。食後の血糖値の上がり方をゆるやかにする根拠が評価されたためです。海外では「添加物」より「食物繊維」として扱われ始めている素材です。


大腸で腸内細菌のエサになる
アラビアガムは、小腸ではそのままの形で吸収されません。大腸まで届き、そこで腸内細菌に分解されます。
人が1日25gを21日間食べた試験では、便からアラビアガムは見つかりませんでした。大腸で発酵されたためと考えられています(Phillips 1998、EFSA 2017)。


「そのまま排出」は誤り
ほかのサイトでは「アラビアガムは吸収されず、大部分がそのまま排出される」という説明も見かけます。
吸収されない点は正しいものの、そのまま出ていくわけではありません。大腸で発酵されるからこそ、おならが増えることがあるのです。
吸収されないけれど、そのまま出ていくわけでもないんですね。
大腸で発酵されるんです。おならが増えるのは、その証拠ですね。
アラビアガムの量を食品とサプリで比較


正体が食物繊維だと分かったところで、気になるのは量です。
食品から入る量、サプリで売られている量、人が食べて害がなかった量を1日あたりで並べました。食品から入る量は、サプリ1日分にも届かないという結果です。


30gって、ガムなら何百個分になるんでしょう……。
ガム1粒に入るのはごくわずかです。食品だけで30gに届くことはまず考えにくいですね。
食品からは1日1〜3g程度
欧州食品安全機関(EFSA)の推定では、ヨーロッパの大人が食品からとるアラビアガムは、平均で体重1kgあたり1日15〜65mgでした。
体重50kgの人なら1日およそ0.8〜3.3gです。日本の摂取量の公式な推定は見つかりませんでしたが、加工食品の多いヨーロッパを大きく上回るとは考えにくい量です。


サプリの目安は1日5g
同じ素材が、「アカシア食物繊維」の名前で粉末サプリとして売られています。
| 商品名 | 1日の目安量 | 原材料 |
|---|---|---|
| 有機水溶性アカシア食物繊維 | 約5g | 有機アカシアファイバー |
| ケンプリア アカシアファイバー | 約1.5g(食物繊維1.3g) | アカシア食物繊維 |
| 商品名 | 1日の目安量 |
|---|---|
| 有機水溶性アカシア食物繊維 | 約5g |
| ケンプリア アカシアファイバー | 約1.5g |
食品の添加物としては避けられ、サプリとしてはお金を出して買われている。同じものが、表示の名前で正反対に扱われているのが実態です。
人が1日30g食べても害なし
EFSAの評価書には、人が1日30gを最長18日間食べた試験が紹介されています。結果はよく耐えられ、一部の人におならが増えた程度でした。
EFSAはこれを「望ましくはないが、有害ではない」と判断しています。1日53gでも、出たのは軽いおならでした。
30gも食べて、おならが増えるくらいなんですか。
「望ましくはないが、有害ではない」というのが欧州の判断です。
日本人は食物繊維が足りない
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、食物繊維の1日の目標量は30〜64歳の男性で22g以上、18〜64歳の女性で18g以上です。
一方、令和6年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均は男性19.2g、女性17.1gでした。男女とも目標量に届いていません。アラビアガムを避けても、食物繊維の不足が少し広がるだけです。


アラビアガムの安全性の評価


ここからは、国内外の公的機関がアラビアガムをどう評価しているかを見ていきます。
国際機関も欧州も日本も、評価の結論はそろっていました。「1日にとってよい量を数字で決める必要がない」という、添加物の中でも最も安全側の扱いです。
数字で決めないって、逆に不安な気もします。
決める必要がないほど、害が出る量が見つからなかったという意味なんです。
JECFAは許容量を定める必要なし
FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、1982年に初めてアラビアガムを評価し、1989年の再評価でも1日許容摂取量を「特定しない(not specified)」としました。
これは、通常の使い方ならどれだけとっても健康上の心配がないと判断された添加物に付く評価です。比べると、コチニール色素は体重1kgあたり5mgという数字が決まっています。


EFSAも2017年に懸念なし
EFSAは2017年の再評価で、「数値の1日許容摂取量は必要ない」と結論しました。
発がん性や遺伝子への影響も、動物試験で認められていません。一般の人の摂取量で安全上の懸念はないというのが、欧州の公式な見解です。
欧州でも、許容量の数字はいらないという結論なんですね。
発がん性や遺伝子への影響も、動物試験で認められていません。
乳児も2019年に評価済み
2017年の評価は、生後12週未満の赤ちゃんを対象外にしていました。そこでEFSAは2019年に、生後16週未満の乳児について追加で評価しています。
結論は「安全域が大きく、健康上の懸念はない」でした。あわせて、重金属などの規格値を下げるよう勧告しています。
赤ちゃんについても、あとから確かめていたんですね。
はい。あわせて、重金属などの基準を厳しくするよう勧めています。
日本は既存添加物で使用基準なし
日本では、アラビアガムは既存添加物名簿の番号18に載っている「増粘安定剤」です。昔から使われてきた天然の添加物として、使用が認められています。
使える食品や量を決めた使用基準の一覧には、アラビアガムの名前はありません。どの食品に、どれだけ使ってもよい扱いの添加物です。
使える量に決まりがないのは、安全だからなんですね。
昔から使われてきた天然の添加物で、使用基準の一覧に名前がありません。
アラビアガムのアレルギーと注意点


量の心配がほぼないと分かったところで、残るのはアレルギーです。
調べると、報告の大半は「吸い込んだ」ケースで、食べてのアレルギーはごくまれでした。ただし、ゼロではありません。気をつけたい人の特徴をまとめます。
アレルギーがあるかどうか、自分では分からないです。
ガムやチョコで口がかゆくなった経験がなければ、まず心配はいりません。
粉を吸い込む職場で喘息
アレルギーの報告が多いのは、アラビアガムの粉を毎日吸い込む職場です。
フィンランドのキャンディー工場では、作業員11人のうち4人がアラビアガムによる喘息と診断されました。昔は印刷の版にも使われ、印刷工の喘息として知られていました。


食べてのアレルギーはまれ
EFSAは2017年、食べた後のアレルギーの症例報告は「見つからなかった」としています。
ただ実際には、コーヒー豆のつや出しに使われたアラビアガムで重いアナフィラキシーが起きた1例などの報告があります。まれだが、起こりうると覚えておくのが正確です。
食べてのアレルギーも、ゼロではないんですね。
まれですが、起こりえます。違和感が出たら医師に相談してください。
花粉症の人の反応
花粉症の人の血液では、アラビアガムに触れたことがなくても、アラビアガムに反応する抗体が見つかることがあります(Fötisch 1998)。
抗体があっても、必ず症状が出るわけではありません。食べて口や喉に違和感が出たら、原材料表示を控えて医師に相談してください。
花粉症だと、反応する抗体があることもあるんですね。
抗体があっても、必ず症状が出るわけではありません。
「アカシア科」という科はない
「アカシア科の植物にアレルギーがある人は注意」という説明も見かけますが、植物の分類に「アカシア科」はありません。アラビアガムの木はマメ科です。
また、アカシアはちみつの「アカシア」はニセアカシアという別の木です。はちみつのアカシアとアラビアガムは原料が違うので、混同しないようにしましょう。
アカシアはちみつとは、関係ないんですね。
はちみつのアカシアはニセアカシアという別の木です。混同しないようにしましょう。
アラビアガムが入った食品一覧


最後に、アラビアガムが実際にどんな食品に入っているかを紹介します。
メーカーの公式サイトで原材料表示を1品ずつ確かめたところ、見つかったのはガム・チョコ・グミでした。表示の書かれ方にも、知っておきたいポイントがあります。


いつも噛んでいるガムにも入っていました。
ガム1粒に入る量はわずかです。毎日噛んでも、サプリ1日分には届きません。
ガムに多く使われる
| 商品名 | メーカー | 表示 |
|---|---|---|
| キシリトールガム<ライムミント> | ロッテ | 増粘剤(アラビアガム) |
| ACUO<グリーンミント> | ロッテ | 増粘剤(アラビアガム) |
| ふ~せんの実<ブルーベリー> | ロッテ | 増粘剤(アラビアガム) |
| ポスカ<クリアミント> | 江崎グリコ | 増粘剤(アラビアガム) |
| 商品名 | 表示 |
|---|---|
| ロッテ キシリトールガム | 増粘剤(アラビアガム) |
| ロッテ ACUO | 増粘剤(アラビアガム) |
| ロッテ ふ~せんの実 | 増粘剤(アラビアガム) |
| 江崎グリコ ポスカ | 増粘剤(アラビアガム) |
調べた範囲では、粒ガムの定番品に多く使われていました。
ガムのほかの添加物と並んで「増粘剤(アラビアガム)」と書かれています。
チョコやグミにも
明治のマーブルは「増粘剤(アラビアガム)」、UHA味覚糖の忍者めし ラムネは「ゲル化剤(アラビアガム)」でした。
同じアラビアガムでも、使う目的によって「増粘剤」「ゲル化剤」と書き分けられるのがポイントです。
同じアラビアガムでも、書き方がちがうんですね。
使う目的で「増粘剤」「ゲル化剤」と書き分けられます。
「増粘多糖類」に隠れることも
ドレッシングや飲料も調べましたが、公式サイトで「アラビアガム」と書かれた商品は見つかりませんでした。多かったのは「増粘多糖類」というまとめた書き方です。
2種類以上を使ったときの書き方なので、中にアラビアガムが入っていても名前は出ません。


表示だけで完全に避けるのはむずかしいのが実情です。とはいえ、ここまで見てきたとおり、避ける必要性はほとんどありません。
アラビアガムのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、アラビアガムについて多い疑問にまとめて答えます。
いずれも公的機関の評価と、メーカーの原材料表示にもとづいた回答です。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
アラビアガムに発がん性はありますか
EFSAの2017年の再評価では、動物試験で発がん性は認められていません。
JECFAも1日許容摂取量を「特定しない」としており、発がんの心配がある添加物とは扱われていません。
アラビアガムを毎日とっても大丈夫ですか
大丈夫です。食品から入る量は1日数g程度とみられ、人が1日30gを食べた試験でも害はありませんでした。
同じものが食物繊維のサプリとして毎日とる前提で売られています。
子どもや赤ちゃんが食べても平気ですか
EFSAは2019年、生後16週未満の乳児についても「健康上の懸念はない」と結論しています。
ガムは誤って飲み込むおそれがあるため、年齢に合わせて与えてください。
アラビアガムで下痢になることはありますか
食物繊維なので、一度に大量にとるとおならが増えたり、お腹がゆるくなったりすることはあります。
試験で症状が出たのは1日30g以上の量で、食品からとる量ではまず起こりません。
アラビアガムとアカシア食物繊維は同じものですか
同じものです。アラビアガムの別名が「アカシアガム」で、食物繊維として売るときに「アカシア食物繊維」と呼ばれます。
ただし「アカポリ」などアカシアの樹皮から作る健康食品は、成分が別物です。
アラビアガムを避けるにはどうすればいいですか
原材料表示で「アラビアガム」「アカシア」の文字を探します。ガムやチョコに多く見つかりました。
「増粘多糖類」と書かれた食品は中身が分からないため、気になる場合はメーカーに問い合わせると確実です。
アラビアガムの危険性についてのまとめ


アラビアガムが危険なのかを、公的機関の評価と人の試験の数字で確かめてきました。
答えは「量の心配はほぼなく、まれなアレルギーだけ気をつければよい」です。
- 正体はマメ科の木の樹液
- 中身の9割以上が水溶性食物繊維
- 大腸で腸内細菌のエサになる
- 食品からの量はサプリ1日分より少ない
- 国際機関も欧州も許容量の設定不要
- アレルギーの多くは粉の吸い込み
アラビアガムを避けると、サプリで売られている食物繊維をわざわざ遠ざけることになるというのが、今回いちばんの発見でした。
ガムの裏の「アラビアガム」は、食物繊維だと思えばいいんですね。
そうです。口や喉に違和感が出たことがなければ、気にせず選んで大丈夫です。
次にガムやチョコの裏面で「アラビアガム」を見かけたら、木の樹液の食物繊維だと思い出してみてください。
お菓子の着色料が気になる人は、虫が原料の着色料の一覧もどうぞ。
海藻からとれる添加物では、アルギン酸エステルの記事もあります。アラビアガムとちがって許容量が数字で決まっていますが、日本人がとっている量はその約800分の1でした。
成分ラボでは身近な食品を、メーカーの公式表示と国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。
ほかの添加物や甘味料の安全性を、許容量の数字で確かめた記事もあわせてどうぞ。








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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。食物アレルギーのある方は、医師の指示を優先してください。




