ドレッシングやたれ、アイスやゼリーの原材料欄でよく見かける「キサンタンガム」。とろみをつけるための食品添加物です。
一方で、「キサンタンガムには発がん性があるらしい」「おなかがゆるくなる」という話を耳にして、なるべく避けたいと考えている方もいるかもしれません。
- 発がん性があるのか知りたい
- おなかがゆるくなると聞いて不安
- 表示を見て避けられるのか知りたい
- 避けたら何を選べばいいか迷う
そこで、国際機関の安全性評価と消費者庁の表示ルール、キユーピー公式の商品情報をもとに、キサンタンガムを避けるとどうなるかを確かめました。
結果、キサンタンガムを避けて手作りドレッシングにすると、大さじ1杯のカロリーはノンオイルの約8.5倍になることが分かりました。
添加物を避けて手作りにすれば、体にいいと思っていました……。
避けたあとに何を食べるかまで見ると、話が変わるんです。数字で順番に確かめていきましょう。
- キサンタンガムの正体
- 表示を見て避けられるか
- 避けて手作りにしたときのカロリー
- 発がん性と安全性の評価
使う数字は、メーカーの公式表示と国・国際機関の資料に限りました。まずは、なぜ体に悪いと言われるのかから見ていきます。
キサンタンガムが体に悪いと言われる理由


キサンタンガムは、少しの量で強いとろみがつく食品添加物です。ドレッシングのほか、たれ、ソース、アイス、介護用のとろみ剤など、幅広く使われています。とろみやゲル状にする添加物のなかまには、ペクチンやカラギーナンなどもあります。
「体に悪い」と言われる理由をたどると、3つに分かれました。発がん性への不安、おなかへの影響、アレルギーへの心配です。
どれも、ちょっとこわい話ですね。
1つずつ、根拠があるかどうかを確かめていきますよ。
発がん性があるのでは
「添加物=がんになる」というイメージから、キサンタンガムにも発がん性があるのではと心配する声があります。
ただ、国際機関の安全性評価では、動物の長期試験でがんは増えていません。くわしくは5章で見ます。
名前がカタカナだと、なんだか不安になります。
カタカナの名前でも、中身は菌が作った「とろみの成分」なんですよ。
おなかがゆるくなる
キサンタンガムは食物繊維のなかまで、たくさんとるとおなかがゆるくなると言われています。
これは実際に人の試験で確かめられていますが、問題になったのは1日15gという量でした。この量がどれくらいかを、5章で確かめます。
おなかの話は、本当なんですね。
本当です。ただ、量を知ると印象が変わると思いますよ。
アレルギーが心配
参考にした記事では、「原料のトウモロコシや小麦にアレルギーがある人は反応する可能性がある」と書かれていましたが、根拠は示されていませんでした。
ヨーロッパの評価機関の資料では、キサンタンガムはぶどう糖やショ糖などの糖を菌に与えて作ると説明されています。食物アレルギーがある方は、自己判断せず医師に相談しましょう。
原料のことまでは、表示を見ても分かりませんね。
そうなんです。心配なときは、メーカーに問い合わせるのが確実ですよ。
キサンタンガムとは何か


ここからは、キサンタンガムがどんなものかを、消費者庁「食品表示基準について」とヨーロッパの評価機関の資料で見ていきます。
結果、菌が糖から作る多糖類で、国の分類は「既存添加物」でした。栄養成分表示のカロリー計算では、1gあたり0kcalとして扱われます。


菌が作るものなんですね。
納豆や味噌と同じように、微生物の力を使って作るんですよ。
菌が糖から作るとろみ
キサンタンガムは、キサントモナスという菌に糖を与えて培養し、菌が外に出した多糖類を取り出したものです。消費者庁の通知でも「キサントモナスの培養液から得られた、多糖類を主成分とするもの」と説明されています。
水に溶かすと、ほんの少しの量で強いとろみがつくのが特徴です。そのため、ドレッシングやたれで広く使われています。
ほんの少しで、とろみがつくんですね。
だから、たくさん入れる必要がないんですよ。
原材料欄での名前
| 書かれ方 | 名前 |
|---|---|
| 物質名 | キサンタンガム |
| 別名 | キサンタン多糖類、ザンサンガム |
| 簡略名 | キサンタン |
| 増粘多糖類を2種以上使ったとき | 増粘多糖類(まとめて書ける) |
キサンタンガムは、国が「既存添加物」として名簿に載せている増粘安定剤です。原材料欄では「増粘剤(キサンタンガム)」のように、用途名と一緒に書かれることが多くなっています。
カロリーは0kcal扱い
消費者庁の通知では、食物繊維のカロリーの計算に使う数字(エネルギー換算係数)が素材ごとに決められています。キサンタンガムは1gあたり0kcalとして扱う食物繊維です。
つまり、キサンタンガム自体はカロリーをほとんど増やさないということです。この点が、4章の比較で効いてきます。
とろみがついても、カロリーは増えないんですね。
そうなんです。ここが、ノンオイルのドレッシングとつながってきますよ。
キサンタンガムは表示を見て避けられるか


「キサンタンガムが心配なら、表示を見て入っていない商品を選べばいい」と考える人もいるでしょう。そこで、キユーピー公式の商品情報に載っている「ドレッシングなど」42品の原材料を、すべて確かめた結果を紹介します。
結果、増粘剤を使っていない商品は0品でした。38品はキサンタンガム、4品は「増粘多糖類」という書き方です。


42品全部に入っているなんて、驚きです。
ドレッシングでは、それだけよく使われている成分なんですよ。
42品すべてに増粘剤
| 原材料欄の書かれ方 | 商品数 |
|---|---|
| 増粘剤(キサンタンガム)など、キサンタンガムと書いてある | 38品 |
| 増粘多糖類と書いてある | 4品 |
| 増粘剤を使っていない | 0品 |
ノンオイルのドレッシングも、油の多いごまドレッシングも、すべて増粘剤入りでした。キユーピーのドレッシングだけでキサンタンガムを避けようとすると、選べる商品がなくなってしまうのです。
増粘多糖類とまとめて書ける
消費者庁の通知では、増粘安定剤の多糖類を2種類以上使うときは「増粘多糖類」とまとめて書いてよいとされています。
キユーピーのごま油&ガーリックドレッシングやオリーブオイル&オニオンドレッシングは、原材料欄が「増粘多糖類」です。この書き方だと、キサンタンガムが入っているかどうかは表示から分かりません。
「増粘多糖類」の中身までは、見分けられないんですね。
そうなんです。表示だけで完全に避けるのは、むずかしいんですよ。
参考記事との違い
参考にした記事では、キサンタンガムは原材料欄に「キサンタンガム」と明記される義務があると書かれていました。
しかし実際には、2種類以上の多糖類を使えば「増粘多糖類」とまとめて書けます。「表示を見れば必ず避けられる」わけではないことは、知っておきたいポイントです。ほかの増粘剤については、アラビアガムの記事でも調べています。
表示を見れば大丈夫だと思っていました。
表示のルールを知っておくと、思い込みに気づけるんですよ。
キサンタンガムを避けて手作りドレッシングにすると


市販のドレッシングで避けられないなら、「油と酢で手作りすればいい」と考える人もいるでしょう。そこで、キユーピーのノンオイルと、増粘剤を使わない手作りドレッシングを、大さじ1杯(15g)で比べました。
結果、ノンオイル青じその8kcalから、手作りは約68kcalへ、約8.5倍になりました。


手作りのほうが、ずっとカロリーが高いんですね。
油の量の違いなんです。表で確かめてみましょう。
大さじ1杯で約8.5倍
| 大さじ1杯(15g) | ノンオイル青じそ | フレンチ(セパレート) | 手作り(油と酢を同量) |
|---|---|---|---|
| 熱量 | 8kcal | 41kcal | 約68kcal |
| 脂質 | 0.0g | 3.8g | 約7.5g |
| キサンタンガム | あり | あり | なし |
キサンタンガムを避けて手作りにすると、大さじ1杯の熱量はノンオイルの約8.5倍です。添加物を避けることが、カロリーを減らすことにはつながらないと分かりますね。
手作りのカロリーの計算
手作りは、油と酢を同じ重さで混ぜた場合で計算しました。文部科学省の食品成分表で、調合油は100gあたり886kcal、穀物酢は25kcalです。
大さじ1杯15gのうち、油7.5gで約66kcal、酢7.5gで約2kcal、合わせて約68kcalになります。油を多めにすると、カロリーはさらに増えます。
塩は、カロリーに入らないんですか。
塩は0kcalなので、計算には入れていないんですよ。
セパレートタイプにも入っている
「振ってから使うセパレートタイプなら、増粘剤は入っていないのでは」と思う人もいるでしょう。しかし、フレンチドレッシング(セパレート)の原材料にも増粘剤(キサンタンガム)が入っていました。
カロリーの低いノンオイルにも、とろみ付けのキサンタンガムが入っています。カロリーを抑えたいなら、ノンオイルを少量使うのが現実的な選び方です。
ノンオイルにも、ちゃんと入っているんですね。
そうなんです。どれを選ぶかは、何を減らしたいかで決めるといいですよ。
キサンタンガムの発がん性と安全性


最後に、いちばん気になる発がん性を確かめます。ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)が2017年に出した再評価には、これまでの国際機関の評価と試験の結果がまとめられています。
結果、動物の長期試験でがんは増えず、1日に摂ってよい量は「特定しない」という評価でした。気をつけたいのは、おなかへの影響です。


がんの心配は、しなくてよさそうですね。
評価の中身を、1つずつ見ていきましょう。
許容量は特定しない
FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は1986年に、キサンタンガムの1日摂取許容量(ADI)を「特定しない」としました。EFSAも2017年の再評価で、数字の許容量を決める必要はないと結論づけています。
「特定しない」は、ふつうの使い方なら、量を決めて制限するほどの心配はないという意味です。同じ評価になっている添加物には、マルトデキストリンの記事でもふれています。
上限がないなんて、意外でした。
それだけ、試験で悪い影響が見つからなかったということなんですよ。
動物試験でがんは増えず
EFSAの再評価によると、ラットと犬の長期試験では、体重1kgあたり1日1,000mgを与えても悪い影響はなかったとされています。これは試験でいちばん多い量でした。
さらに、ラットの試験で発がん性は認められていません。遺伝子を傷つける心配(遺伝毒性)もないと評価されています。
動物の試験でも、がんは増えなかったんですね。
そうなんです。参考記事の「発がん性の根拠はない」という結論とも一致しますよ。
人は1日15gでおなかに変化
人の試験では、キサンタンガムを1日15g続けてとると、便の量や回数、おならが増えたと報告されています。一方で、1日10〜13g程度の試験では悪い影響は見られませんでした。
15gは、ドレッシング大さじ1杯と同じ重さです。とろみの粉だけでその量をとることは、ふつうの食事ではまず考えにくいでしょう。ほかの添加物の量の話は、アルギン酸エステルの記事にもまとめました。
15gも、とろみの粉だけでとることはなさそうです。
ただ、介護用のとろみ剤を使う人は、使う量の目安を守ってくださいね。
キサンタンガムのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、キサンタンガムについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
キサンタンガムに発がん性はありますか
ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)の2017年の再評価では、ラットの試験で発がん性は認められていません。ラットと犬に体重1kgあたり1日1,000mgを与えても、悪い影響はなかったとされています。
JECFAとEFSAの評価は、1日に摂ってよい量を「特定しない」です。
キサンタンガムでおなかがゆるくなりますか
人の試験では、1日15gを続けてとると、便の量や回数、おならが増えたと報告されています。
15gはドレッシング大さじ1杯と同じ重さで、ふつうの食事でとろみの粉だけをその量とることはまず考えにくい量です。
キサンタンガムは天然ですか、合成ですか
キサンタンガムは、菌に糖を与えて培養し、菌が作った多糖類を取り出したものです。
国の分類は「既存添加物」で、消費者庁の通知では「キサントモナスの培養液から得られた、多糖類を主成分とするもの」とされています。
表示を見ればキサンタンガムを避けられますか
完全には避けられません。増粘安定剤の多糖類を2種類以上使うときは、「増粘多糖類」とまとめて書いてよいきまりがあるからです。
キユーピーの「ドレッシングなど」42品のうち、4品は「増粘多糖類」と書かれていました。
キサンタンガムが入っていないドレッシングはありますか
キユーピー公式の「ドレッシングなど」42品を確かめたところ、増粘剤を使っていない商品は0品でした。
油と酢で手作りすれば避けられますが、大さじ1杯で約68kcalと、ノンオイル青じそ(8kcal)の約8.5倍になります。
キサンタンガムはカロリーがありますか
消費者庁の通知では、キサンタンガムは栄養成分表示のカロリー計算で1gあたり0kcalとして扱う食物繊維です。
そのため、ノンオイルドレッシングのとろみ付けに使っても、カロリーはほとんど増えません。
キサンタンガムの危険性のまとめ


キサンタンガムに発がん性はあるのかを、国際機関の評価と消費者庁の表示ルール、キユーピー公式の商品情報で確かめてきました。
答えは「発がん性の心配はなく、気をつけるのはとりすぎたときのおなか。避けるより、何を選ぶかを考える」です。
- 菌が糖から作る既存添加物
- カロリー計算では1gあたり0kcal
- 動物の長期試験でがんは増えず
- 人は1日15gでおなかに変化
- 2種以上なら「増粘多糖類」と書ける
- 避けて手作りにするとカロリー約8.5倍
キサンタンガムを避けて手作りドレッシングにすると、大さじ1杯のカロリーはノンオイルの約8.5倍というのが、今回いちばんの発見でした。
「添加物なし」だけで選ばないようにします。
そのとおりです。避けたあとに何をとるかまで見る。これがいちばん大事なポイントですよ。
次にドレッシングを選ぶときは、カロリーと原材料の両方を見てみてください。
増粘多糖類は、身近な小袋にも入っています。納豆のたれの記事では、からしのとろみに使われる増粘多糖類と、たれ・からしの塩分を確かめました。








パンやお菓子のしっとり感を保つ添加物では、トレハロースの記事もあります。一度に体重1kgあたり0.65gをとると、一時的におなかがゆるくなる目安とされていました。
名前がこわく見える添加物では、グリシンの記事もあります。発がん性の話のもとは、体重60kgなら1日75gにあたる量のラット試験でした。
名前がこわく聞こえる添加物では、シリコーン樹脂の記事もあります。泡を消す目的だけに食品1kgあたり0.050gまで使え、上限まで入った豆腐1丁でも1日の許容量の2割でした。
成分ラボでは身近な食品を、メーカーの表示と国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事の安全性評価は、ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)「Re-evaluation of xanthan gum (E 415) as a food additive」(2017年)によります。JECFAの評価の経緯も同資料の記載です。表示のきまり、キサンタンガムの定義と別名、エネルギー換算係数は、消費者庁「食品表示基準について」(令和5年6月29日改正)によります。ドレッシングの原材料と栄養成分は、キユーピー公式の商品情報の表示です(2026年10月12日に「ドレッシングなど」42品を確認)。手作りドレッシングの値は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」の調合油と穀物酢から、油と酢を同じ重さで混ぜた場合として計算しました。商品の中身は変わることがあるため、購入時はパッケージの表示を確かめてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。食物アレルギーのある方や治療中の方、とろみ剤を使っている方は、医師や専門職の指示を優先してください。








