冷凍食品やお菓子、たれやソースの原材料表示で、よく見かける「加工デンプン」。ふつうのでん粉に「加工」の2文字が付くだけで、なんとなく身構えてしまう方もいるかもしれません。
「加工デンプンは化学的に作られているから危険らしい」「海外では規制されているらしい」という話を耳にして、避けたほうがいいのか迷っている方もいるはずです。
- 加工デンプンが危険と言われる理由を知りたい
- ふつうのでん粉と何がちがうのか知りたい
- 国はどう評価しているのか気になる
- 避けるべき人や食品があるのか知りたい
そこで、食品安全委員会の評価書と、厚生労働省・消費者庁の資料をつき合わせて調べています。
結果、国の評価は「1日に摂ってよい量の上限(ADI)を決める必要はない」で、気をつける点として挙がったのは赤ちゃん向けの食品でした。大人がやみくもに避けるより、赤ちゃん向けの食品で原材料を見るほうが理にかなっています。
化学的に作ったでん粉と聞くと、ちょっと怖いです……。
その気持ちは分かります。国の資料に何が書いてあるか、順番に確かめていきましょう。
- 加工デンプンとは何か、ふつうのでん粉とのちがい
- 食品安全委員会と国際機関の評価
- 赤ちゃん向けの食品での扱い
- 原材料表示での見分け方
使う数字や言葉は、国の資料と国際機関の評価に限りました。まずは、危険と言われる理由から見ていきます。
加工デンプンが危険と言われる理由


加工デンプンが「危険」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、3つに分かれました。化学的な処理をしていること、11品目が1つの名前にまとまること、途中から添加物になったことです。
どれも、なんとなく気になっていたことです。
1つずつ、資料で確かめていきますね。
化学的な処理をしている
加工デンプンは、でん粉の弱点を補うために加工したものです。食品安全委員会の評価書には、「高粘性や冷却するとゲル化するという欠点を克服するため」と書かれています。
11品目は、化学物質を使ってでん粉の分子のつくりを変えたものです。「化学」という言葉が、不安につながりやすいのかもしれません。
とろみを安定させるための加工なんですね。
はい。食品では糊料・乳化剤・増粘安定剤などとして使われていますよ。
11品目が1つの名前にまとまる
原材料表示では、11品目をまとめて「加工デンプン」と書くことができます。消費者庁の「食品表示基準について」で、物質名を短くした「簡略名」として認められているためです。
ラベルを見ても、11品目のうちどれが使われているかは分からないことになります。中身が見えにくいことも、不安の理由になりそうです。
名前が1つだと、何が入っているか分かりませんね。
そうなんです。そこで、11品目まとめての評価を確かめるのが近道ですよ。
途中から添加物になった
11品目は、2008年10月1日に食品添加物に指定されました。厚生労働省の担当者が書いた解説で確かめています。


それまで食品として扱われていたものが、急に添加物の仲間入りをしたので、「何か問題が見つかったのでは」と感じる方もいるかもしれません。理由は2章で確かめます。
問題があって添加物になった、と思っていました。
そう思いますよね。指定された経緯を見ると、話はちがうんです。
加工デンプンは、でん粉に化学的な処理をした11品目


そもそも加工デンプンとは、どんなものなのでしょうか。厚生労働省の担当者による解説と、食品安全委員会の評価書で確かめました。
同じ「加工したでん粉」でも、処理のしかたによって、食品として扱うものと添加物として扱うものに分かれることが分かりました。
加工したでん粉が、全部添加物というわけではないんですね。
そうなんです。分かれ目を順番に見ていきましょう。
物理的・酵素的な処理のでん粉は食品
加熱などの物理的な処理や、酵素による処理をしたでん粉は、日本やEUでは食品として扱われています。酸・アルカリ・漂白といった、簡単な化学的処理をしたものも、こちらの仲間です。
こうしたでん粉は、原材料表示では「でん粉」などの原材料として書かれることになります。
「でん粉」と書いてあるのは、食品のほうなんですね。
はい。添加物の「加工デンプン」とは、表示の場所も変わりますよ。
化学的な処理をした11品目は添加物
一方、各種の化学物質を使って処理したでん粉は、アメリカやEUでは添加物として扱われてきました。


| 名前の系統 | 品目 |
|---|---|
| アセチル化 | アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、酢酸デンプン |
| リン酸 | リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン |
| ヒドロキシプロピル | ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン |
| そのほか | オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酸化デンプン |
日本で2008年に添加物に指定されたのは、この11品目です。
名前は長いですが、11品目だけなんですね。
そのとおりです。ラベルの「加工デンプン」は、このどれかを指しますよ。
2008年に添加物になったのは国際的な整合性のため
11品目は、昭和54年以降、国際機関JECFAで安全性評価が終わったものに限り、食品として扱われてきました。
添加物に指定された理由は、海外では添加物として扱われていることから、国際的な整合性を図るためと説明されています。問題が見つかったから、というわけではありません。
海外に合わせるための指定だったんですね。
はい。指定の前に、食品安全委員会が安全性をあらためて評価していますよ。
国の評価は「1日の上限を決める必要はない」


では、加工デンプンの安全性はどう評価されているのでしょうか。食品安全委員会の評価書(2007年)で確かめました。
結論は、「添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、一日摂取許容量(ADI)を特定する必要はない」でした。
上限を決めなくていい、というのはどういう意味ですか。
添加物として適切に使われるなら安全性に懸念がないので、数字の上限を決める必要はない、という評価なんです。
ADIを決める必要はないという評価
ADIは、一生食べ続けても健康に影響がないと考えられる1日あたりの量です。多くの添加物には、体重1kgあたり何mgという数字が決められています。
加工デンプンは、その数字を「特定する必要はない」とされました。評価書は、日本でも食品として長い食経験があり、安全性に関して特段の問題は指摘されていないことも挙げています。
数字がないのは、ゆるいからではないんですね。
そうなんです。適切に使えば安全性に懸念はない、という評価ですよ。
国際機関JECFAも「特定しない」
評価書によると、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)も、加工デンプンのADIを「特定しない(not specified)」と評価しています。
食品安全委員会は、国際機関、アメリカ、EUの評価結果も参照したうえで結論を出しています。
海外でも、同じような評価なんですね。
はい。国際機関の評価とも、結論がそろっていますよ。
ラットの盲腸や腎臓の変化はでん粉でも起きる
評価書では、発がん性、生殖発生毒性、遺伝毒性を有さないと考えられるとされています。


ラットに高い量を与えた試験では、盲腸や腎臓に変化が見られました。ただし、通常の未加工のでん粉でも起きるラット特有の所見で、ヒトの安全性への懸念はほとんどないと判断されています。
ふつうのでん粉でも同じ変化が起きるんですね。
そうなんです。加工したから起きた変化、というわけではないんですよ。
気をつけるなら赤ちゃん向けの食品


評価書は、安全性に懸念がないとしたうえで、乳幼児向け食品での使い方には注意を向けています。ここが、この記事でいちばん伝えたい点です。
大人が日々の食品で加工デンプンを避けるより、赤ちゃん向けの食品で原材料を見るほうが、評価書の内容に沿った気のつけ方です。
気をつける場所が、はっきりしているんですね。
はい。何が書かれているか、1つずつ見ていきましょう。
EUでは乳幼児向けは5%以下
評価書によると、EUの食品科学委員会(SCF)は、11品目を「乳幼児向け食品については5%以下の濃度で使用すべき」グループに入れています。
それ以外の食品には、特に制限なく使用できるという扱いです。なお、5%の根拠となる資料は確認されていない、と評価書には書き添えられています。
赤ちゃん向けだけ、量に目安があるんですね。
そうなんです。赤ちゃん向けの食品は、ほかの食品と分けて考えられているんですよ。
2品目は乳幼児向けに使わない
同じグループの中でも、プロピレンオキシドで処理したヒドロキシプロピルデンプンとヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンは、乳幼児向け食品には用いるべきではないとされています。


食品安全委員会も、プロピレンオキシドが残る可能性のある加工デンプンは、技術的に可能なレベルで減らすよう留意するべきとしています。
ヒドロキシプロピルという名前の2つですね。
はい。ただ、ラベルでは「加工デンプン」とまとめて書けるので、名前までは分からないこともありますよ。
日本は使用基準なし、モニタリングを検討
食品安全委員会は、リスク管理機関は今後、乳幼児向け食品における加工デンプンの使用についてモニタリングを実施することを検討するべきとしています。
一方、厚生労働省の解説によると、11品目には使用基準は設けられていません。ただし、目的の効果を得るのに必要な量を超えないこととされています。
使う量に、決まりはないんですね。
はい。必要な量だけ使う、というのが前提になっていますよ。
原材料表示での加工デンプンの見分け方


では、ラベルではどう見分ければよいのでしょうか。消費者庁の「食品表示基準について」で確かめました。
ポイントは、「加工デンプン」は添加物、「でん粉」は原材料として書かれることです。
文字のちがいで、見分けられるんですね。
はい。表示のルールを3つ押さえておきましょう。
「加工デンプン」は簡略名
化学的に処理したでん粉は、物質名の代わりに「加工デンプン」と書けることになっています。11品目のどれを使っても、ラベルは同じ書き方になることがあります。
「加工デンプン」は、添加物として表示されるものです。原材料表示の中で、添加物を書いた部分に出てきます。
添加物の部分を見ればいいんですね。
そのとおりです。名前が1つでも、中身は11品目のどれかだと覚えておきましょう。
物理的・酵素的な処理のでん粉は「でん粉」
消費者庁の資料では、物理的・酵素的に処理したでん粉と加工デンプンを一緒に使う場合、前者は原材料として、加工デンプンは添加物として表示するよう指導するとしています。


原材料に「でん粉」とだけあれば、添加物の11品目ではないということです。添加物の中身を広く知りたい方は、pH調整剤の記事もあわせてどうぞ。
「でん粉」と「加工デンプン」は、別ものなんですね。
はい。ラベルでは、書かれている場所と名前の両方を見てくださいね。
小麦が原料なら「小麦由来」
加工デンプンの原料に小麦を使った場合、「加工デンプン(小麦由来)」のように書くこともできます。小麦アレルギーの方への表示です。
赤ちゃん向けの食品を選ぶときは、原材料と添加物の欄をあわせて見ると、加工デンプンの有無も原料も確かめられます。
アレルギーの表示も、同じところで見られるんですね。
そうなんです。表示の見方を知っておくと、選ぶときに迷わずにすみますよ。
加工デンプンの危険性のよくある質問


ここまでの内容をふまえて、加工デンプンについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
加工デンプンは体に悪いですか
食品安全委員会は、11品目が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、一日摂取許容量(ADI)を特定する必要はないと評価しています。
加工デンプンと片栗粉などのでん粉は何がちがいますか
加工デンプンは、化学物質を使ってでん粉を処理した11品目で、添加物として扱われます。物理的・酵素的に処理したでん粉は食品として扱われ、表示は原材料の「でん粉」などです。
加工デンプンはいつから添加物になりましたか
2008年10月1日に、11品目が食品添加物に指定されました。それまでは、国際機関JECFAで安全性評価が終わったものに限り、食品として扱われていました。
赤ちゃんに加工デンプン入りの食品を食べさせてもいいですか
EUの食品科学委員会は、乳幼児向け食品では5%以下の濃度で使用すべきとし、ヒドロキシプロピルデンプンなど2品目は乳幼児向け食品に用いるべきではないとしています。食品安全委員会も、乳幼児向け食品での使用のモニタリングを検討するべきとしています。気になる場合は、原材料表示を確かめてください。
ラベルの「加工デンプン」から、どの品目か分かりますか
「加工デンプン」は簡略名なので、11品目のどれが使われているかは、ラベルだけでは分からないことがあります。
加工デンプンに使う量の決まりはありますか
11品目には使用基準は設けられていません。ただし、目的の効果を得るのに必要な量を超えないこととされています。
加工デンプンの危険性のまとめ


加工デンプンは危険なのかを、食品安全委員会の評価書と、厚生労働省・消費者庁の資料で確かめてきました。
答えは「11品目は添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がなく、ADIを特定する必要はないと評価されている。気をつける点として挙がったのは、赤ちゃん向けの食品」です。
- 加工デンプンは、でん粉に化学的な処理をした11品目
- 物理的・酵素的に処理したでん粉は食品で「でん粉」と表示
- 2008年10月、国際的な整合性のため添加物に指定
- 食品安全委員会は「ADIを特定する必要はない」と評価
- EUは乳幼児向け食品で5%以下、2品目は使わないとしている
- ラベルの「加工デンプン」は11品目をまとめた簡略名
大人がやみくもに避けるより、赤ちゃん向けの食品で原材料を見るというのが、今回いちばん大事な点でした。
全部避けなきゃと思っていたので、気が楽になりました。
そのとおりです。気をつけるところを知って、ラベルを見る。これがいちばん大きなポイントですよ。
次に「加工デンプン」の文字を見かけたら、それが赤ちゃん向けの食品かどうかを確かめてみてください。
名前が1つでも中身が複数ある表示には、光沢剤もあります。光沢剤とは?の記事もどうぞ。カルナウバロウのJECFAのADIは体重1kgあたり7mgで、体重50kgなら1日350mgまでです。




同じように「増粘剤(CMC)」のように使う目的の名前をつけて表示する添加物には、セルロースを加工したものもあります。セルロースとは?危険性は?の記事もどうぞ。JECFAは、微結晶セルロースの1日にとってよい量を「特定しない」と評価しています。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。






本記事の加工デンプンの評価は食品安全委員会「添加物評価書 加工デンプン」(2007年)、指定の経緯と使用基準は厚生労働省 医薬食品局 食品安全部 基準審査課の解説(農畜産業振興機構「でん粉情報」2008年11月)、表示のルールは消費者庁「食品表示基準について」によります(2026年10月23日確認)。EUの食品科学委員会(SCF)の扱いは、食品安全委員会の評価書の記載によります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。





