お菓子やシリアル、粉末の食品の原材料表示で見かけることがある「リン酸カルシウム」。カルシウムとリンが結びついた食品添加物です。
一方で、「リン酸カルシウムは体に悪い」「リンをとりすぎると骨がもろくなるらしい」という話を耳にして、リン酸塩が入った食品を避けようか迷っている方もいるかもしれません。
- リン酸カルシウムに毒性があるのか知りたい
- リンのとりすぎが心配
- 子どもに食べさせて大丈夫か気になる
- リン酸塩が入った食品を避けるべきか迷う
そこで、厚生労働省の食品添加物の摂取量調査と食事摂取基準、文部科学省の食品成分表をもとに、リンをどこからどれだけとっているのかを確かめました。
結果、リン酸塩の表示がある食品を避けても、牛乳コップ1杯でその約9倍のリンをとることが分かりました。
添加物が、リンのいちばんの入り口だと思っていました……。
実は、リンはふだんの食べ物にたくさん入っているんです。数字で順番に確かめていきましょう。
- リン酸カルシウムとは何か
- リンの1日の目安と上限
- 子どもが加工食品からとるリンの量
- 身近な食品に入っているリンの量
使う数字は、国の資料と食品成分表に限りました。まずは、なぜ体に悪いと言われるのかから見ていきます。
リン酸カルシウムが体に悪いと言われる理由


リン酸カルシウムは、カルシウムとリン酸が結びついたものです。食品添加物としては「リン酸三カルシウム」などの名前で、カルシウムを強化する目的などに使われています。
「体に悪い」と言われる理由をたどると、3つに分かれました。リンのとりすぎ、添加物というイメージ、そして子どもへの影響です。
どれも、気になる話ですね。
1つずつ、国の資料で確かめていきましょう。
リンのとりすぎが心配
リンは体に必要な栄養素ですが、とりすぎると体に負担がかかることがあります。そのため、国は大人のリンに上限を決めています。
では、ふだんの食事でどれくらいとっているのでしょうか。3章で上限、4章と5章で実際の量を見ていきます。
上限があるなら、それと比べればいいんですね。
そうなんです。物差しを先に用意しますよ。
添加物だから危ない?
リン酸カルシウムは、国が使用を認めた食品添加物です。厚生労働省は、リン酸塩などの添加物を毎日どれだけとっているかを定期的に調べています。
厚生労働省の摂取量調査は、スーパーで売られている加工食品を実際に買って測る方法です。量の実態が分かるので、この記事でも使います。
実際に買って測っているんですね。
机の上の計算だけではないので、信頼できる数字なんですよ。
子どもは大丈夫?
子どもは体が小さいので、同じ量でも影響が大きくなりやすいと心配されます。
ちょうど、令和4年度の調査は1〜6歳の子どもを対象にしていました。4章で、子どもが加工食品からとるリンの量を確かめます。
子どもの数字があるのは、ありがたいです。
そうなんです。親として一番気になるところですからね。
リン酸カルシウムとは?どんな添加物か


ここからは、リン酸カルシウムがどんなものかを整理します。厚生労働省の調査では、リン酸カルシウムはほかのリン酸塩と合わせて調べられています。
結果、リン酸カルシウムに含まれるリンは、肉・魚・乳製品・豆にももともと入っている成分でした。


食べ物にもともと入っているものなんですね。
そうなんです。だから、添加物の分だけ見ても全体はつかめないんですよ。
カルシウムとリンの組み合わせ
リン酸カルシウムは、カルシウムとリン酸が結びついたものの呼び名です。骨や歯の主な成分も、カルシウムとリンでできています。
食品では、カルシウムを足す目的などで使われることがあります。
骨と同じような成分なんですね。
そう聞くと、少しイメージが変わりますよね。
添加物の名前の例
| 添加物の名前 | 調査での分け方 |
|---|---|
| リン酸三カルシウム | オルトリン酸(リン酸塩) |
| リン酸一水素カルシウム | オルトリン酸(リン酸塩) |
| リン酸二水素カルシウム | オルトリン酸(リン酸塩) |
| ピロリン酸二水素カルシウム | 縮合リン酸(リン酸塩) |
調査では、これらをリンとしての総量で測っています。どのリン酸塩から来たかではなく、リンがどれだけ入っているかで比べられるということです。
リンはふだんの食べ物にも入っている
リンは、肉・魚・卵・乳製品・豆など、たんぱく質の多い食べ物にたくさん入っています。
そのため、添加物を避けても、リンをとらない食事にはなりません。5章で、身近な食品のリンの量を比べます。
リンがゼロの食事は、むずかしそうです。
そもそも必要な栄養素なので、ゼロにする必要もないんですよ。
リンの1日の目安と上限


次は、リンの物差しを用意します。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、大人のリンの目安量は男性1,000mg、女性800mgです。
結果、大人の耐容上限量は1日3,000mgでした。子どもには国の上限がないため、国際機関の値も合わせて見ます。


目安量と上限量は、3倍くらい離れているんですね。
そうなんです。ふつうの食事で上限に届くことは考えにくい量ですよ。
大人は目安量1,000mg・上限3,000mg
| 18歳以上 | リン(1日) |
|---|---|
| 目安量(男性) | 1,000mg |
| 目安量(女性) | 800mg |
| 耐容上限量(男女) | 3,000mg |
目安量は、日本人がふだんとっている量をもとに決めた値です。耐容上限量は、これ以上とり続けると健康に悪い影響が出るおそれがある量です。
子どもは国際機関の値で見る
食事摂取基準では、子どものリンの耐容上限量は研究が足りないため設定されていません。そこで厚生労働省の調査では、国際機関(JECFA)が決めた体重1kgあたり1日70mgという最大耐容量で比べています。
1〜6歳の平均体重16.5kgで計算すると、1日約1,155mgです。この量は、添加物だけでなく食品からのリン全部で考える値です。
子どもの物差しも、ちゃんとあるんですね。
国際機関の値を使って、安全性を確かめているんですよ。
国もまだ調べている途中
食事摂取基準の策定資料には、今後の課題として食品添加物を含むリン摂取量の実態調査が必要と書かれています。
つまり、リンの量については、国もさらに詳しいデータを集めている途中です。今わかっている数字で、できるだけ正確に見ていきましょう。
分かっていないこともあるんですね。
そうなんです。分からないことは分からないと書くのが、成分ラボのやり方ですよ。
子どもが加工食品からとるリンは1日181mg


ここで、令和4年度の摂取量調査の数字を見ます。1〜6歳の子どもがふだん食べる量をもとに、加工食品を買って測った結果です。
結果、加工食品からとるリンは1日181mgで、そのうちリン酸塩の表示がある食品からは21mgでした。


表示がある食品の分は、ほんの少しなんですね。
そうなんです。表で詳しく見てみましょう。
181mgでも上限の16%
| 1〜6歳(1日あたり) | リン | 国際機関の最大耐容量に対する割合 |
|---|---|---|
| 加工食品からのリン(全部) | 181mg | 16% |
| うちリン酸塩の表示がある食品から | 21mg | 約2% |
調査では、加工食品からの181mgでも、最大耐容量の16%でした。調査報告のまとめは、いずれも許容量を大きく下回っていたというものです。
ほとんどは食品にもともとあるリン
181mgは、加工食品の原料にもともと入っているリンも合わせた数字です。報告書では、天然由来の食品成分として食品に内在しているため、表示がある食品だけの値より高くなったと説明されています。
つまり、子どもが加工食品からとるリンの多くは、添加物ではなく食品そのものからと考えられます。
添加物より、もともとの食べ物のほうが多いんですね。
そうなんです。同じ形の結果は、ミョウバンの記事でも出ていますよ。
表示のある食品を避けても減るのは約1割
リン酸塩の表示がある食品を全部避けたとしても、減らせるのは1日21mgほど、全体の約1割です。
避けることで、カルシウムなどを足した食品まで手放してしまうこともあります。添加物を避けて栄養が減った例は、クリーム玄米ブランの記事で確かめています。
避けると、別のものまで減ってしまうんですね。
そうなんです。何を減らしたいのかを先に決めることが大切ですよ。
添加物を避けても牛乳1杯でリンは9倍


では、ふだんの食べ物にはどれくらいリンが入っているのでしょうか。文部科学省の食品成分表で、身近な食品を1回に食べる量で計算しました。
結果、牛乳コップ1杯(200g)でリン186mgでした。子どもがリン酸塩の表示がある食品から1日にとる21mgの、約9倍です。


牛乳1杯で、そんなに入っているんですね。
リンは体に必要な栄養素なので、多くの食べ物に入っているんです。
牛乳コップ1杯で186mg
| 食品(1回に食べる量) | リン | カルシウム |
|---|---|---|
| 牛乳 コップ1杯(200g) | 186mg | 220mg |
| プロセスチーズ(20g) | 146mg | 126mg |
| ヨーグルト 全脂無糖(100g) | 100mg | 120mg |
| 木綿豆腐(100g) | 88mg | 93mg |
| 鶏卵 1個(50g) | 85mg | 23mg |
乳製品や豆腐は、リンと一緒にカルシウムもたくさんとれる食品です。リンが入っているから体に悪い、とは言えません。
チーズは少量でも多め
プロセスチーズは100gあたりリン730mgで、20gでも146mgあります。
ただし、チーズはカルシウムも100gあたり630mgと多い食品です。量を食べすぎなければ、気にしすぎる必要はありません。
チーズは、少しでも多いんですね。
そうなんです。でも、カルシウムも一緒にとれるのがいいところですよ。
避けるより、偏らないことが大切
リンは、たんぱく質の多い食品にたくさん入っています。同じ食品ばかり食べず、いろいろな食品を組み合わせることが、リンのとりすぎを防ぐいちばんの方法です。
添加物を避けても量があまり変わらない例は、カゼインNaの記事でも確かめています。添加物の名前より、食事全体の量を見ましょう。
名前だけで避けないことが大事なんですね。
そのとおりです。数字で考えると、こわさが減りますよ。
リン酸カルシウムのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、リン酸カルシウムについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
リン酸カルシウムは体に悪いですか
リン酸カルシウムは、国が使用を認めた食品添加物です。厚生労働省の調査では、子どもが加工食品からとるリンは、国際機関の最大耐容量の16%でした。
リン酸塩の表示がある食品からの分は1日21mgで、ふだんの食事のリンに比べて少ない量です。
リンのとりすぎで骨がもろくなりますか
大人のリンの耐容上限量は1日3,000mgで、目安量は男性1,000mg、女性800mgなので、ふつうの食事で上限に届くことは考えにくいでしょう。
腎臓の病気がある方はリンを制限することがあるので、医師の指示にしたがってください。
子どもに食べさせても大丈夫ですか
令和4年度の調査では、1〜6歳が加工食品からとるリンは1日181mgで、最大耐容量の16%でした。いろいろな食品を組み合わせて食べていれば、心配しすぎる必要はありません。
リンが多い食品は何ですか
リンは、乳製品・肉・魚・卵・豆など、たんぱく質の多い食品にたくさん入っています。牛乳コップ1杯(200g)で186mg、プロセスチーズ20gで146mgです。
リン酸塩が入った食品は避けたほうがいいですか
リン酸塩の表示がある食品を全部避けても、子どもの場合で減らせるのは1日21mgほどです。カルシウムなどを足した食品まで手放すこともあるので、無理に避ける必要はありません。
腎臓が悪い場合はどうすればいいですか
腎臓の病気がある方は、リンの量を制限するよう指示されることがあります。添加物だけでなく食品全体のリンを、医師や管理栄養士と相談しながら調整してください。
リン酸カルシウムは体に悪いかのまとめ


リン酸カルシウムは体に悪いのかを、厚生労働省の摂取量調査と食事摂取基準、文部科学省の食品成分表で確かめてきました。
答えは「リンには上限があるが、添加物からの量は少ない。リン酸塩の表示がある食品を避けても、牛乳1杯でその約9倍のリンをとる」です。
- リン酸カルシウム=カルシウム+リン酸
- 大人の耐容上限量は1日3,000mg
- 子どもは加工食品からリン1日181mg
- それでも最大耐容量の16%
- リン酸塩の表示がある食品からは21mg
- 牛乳1杯でリン186mg
リン酸塩の表示がある食品を避けても、牛乳コップ1杯でその約9倍のリンをとるというのが、今回いちばんの発見でした。
添加物だけ見て避けても、あまり意味がなかったんですね。
そのとおりです。添加物の名前より、食事全体のバランスを見る。これがいちばん大事なポイントですよ。
次にリン酸カルシウムの表示を見かけたときは、「リンはふだんの食べ物にもたくさん入っている」ことを思い出してみてください。
豆腐などに使われる添加物では、シリコーン樹脂の記事もあります。シリコン製の調理器具とは決まりが別であることも整理しました。










乳製品の中身では、ブルガリアヨーグルトの記事もあります。プレーン1カップ180gで脂質5.4g、カルシウム196mgでした。
中華めんのかんすいに使われるリン酸塩では、かんすいの記事もどうぞ。生めん100gのリンは中華めん66mg、うどん49mgで、差は17mgでした。
リン酸を使った添加物には、加工デンプンの仲間もあります。加工デンプンの危険性の記事もどうぞ。リン酸架橋デンプンなど11品目は、2008年10月に添加物に指定されました。
チーズに使われる添加物では、粉チーズのセルロースも調べています。セルロースとは?危険性は?の記事もどうぞ。セルロース入りと無しの粉チーズは、5gあたりのカロリー差が1kcalでした。
成分ラボでは身近な食品を、メーカーの表示と国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事のリンの摂取量は、厚生労働省「令和4年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果」(1〜6歳)の値です。リンの目安量と耐容上限量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、食品のリンとカルシウムは文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」の値です(2026年10月14日確認)。1回に食べる量あたりの値と、最大耐容量に対する割合は、資料の値から単純に計算しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。腎臓の病気がある方や治療中の方は、医師の指示を優先してください。






