清涼飲料水やグミ、缶チューハイの原材料表示で、よく見かける「酸味料」。さわやかな酸っぱさを足して、味を引きしめてくれる添加物です。
一方で、「酸味料は中身が分からないから体に悪い」「発がん性があるらしい」という話を耳にして、酸味料入りの食品を避けたほうがいいのか迷っている方もいるはずです。
- 酸味料が体に悪いと言われる理由を知りたい
- 酸味料の中身は何なのか知りたい
- 食べ物にもともとある酸とどうちがうのか知りたい
- 国際機関は酸味料の安全性をどう評価しているのか知りたい
そこで、消費者庁の表示のルール、文部科学省の食品成分表、国際機関JECFAの評価をつき合わせて調べています。
結果、酸味料にまとめて書ける24種類の多くは、クエン酸や乳酸のように食べ物にもともとある酸でした。成分表で計算すると、レモン果汁15gのクエン酸は約1.0gで、缶チューハイ(レモン風味)350mL 1本の約1.05gとほぼ同じです。
レモンにも、同じ酸が入っているんですね。
そうなんです。ただ、国際機関が「評価をし直す必要がある」とした物質も1つあったので、そこも含めて確かめていきましょう。
- 「酸味料」と表示される24種類の中身
- レモンや酢、ヨーグルトにもともとある酸の量
- 酸味料を避けてレモン果汁にした場合のクエン酸の量
- 国際機関JECFAによる主な酸の評価
使う数字や言葉は、国と国際機関の資料に限りました。まずは、酸味料が体に悪いと言われる理由から見ていきます。
酸味料が体に悪いと言われる理由


酸味料が「体に悪い」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、大きく2つに分かれました。中身が分からないことと、発がん性などのうわさがあることです。
どちらも、ラベルを見ると気になるところです。
1つずつ、資料で確かめていきますね。
中身が分からない
原材料表示では、酸味料は「酸味料」という一括名で書くことができます。一括名とは、使った物質の名前の代わりに、使う目的の名前でまとめて書ける表示のしかたです。
そのため、どの酸をどれだけ使ったのかは、ラベルからは分からないことになります。同じしくみは、香料の記事やpH調整剤の記事でも紹介しています。
中身が見えないと、なんとなく不安です。
そうですよね。2章で、まとめて書ける物質を全部並べてみます。
発がん性などのうわさがある
酸味料について調べると、「発がん性がある」「体に悪い」という話が出てきます。ただ、どの物質についての話なのかが書かれていないことも多いです。
酸味料は1つの物質の名前ではないので、安全性は物質ごとに確かめる必要があります。5章で、国際機関の評価を物質ごとに見ていきます。
「酸味料」とひとまとめにして、怖がっていたかもしれません。
物質ごとに見ると、評価はちがいます。順番に確かめましょう。
酸味料は24種類の物質をまとめた名前


原材料表示の「酸味料」には、何が含まれているのでしょうか。消費者庁の「食品表示基準について」で、一括名「酸味料」の範囲を確かめました。
範囲には、クエン酸や乳酸など24種類の指定添加物が並び、ほかに既存添加物のうち用途が酸味料とされているものも含められます。
24種類も、ひとつの名前にまとまっているんですね。
はい。定義から順に見ていきましょう。
酸味料の定義
「食品表示基準について」では、酸味料を「食品の製造又は加工の工程で,酸味の付与又は増強による味覚の向上又は改善のために使用される添加物及びその製剤」と定義しています。
つまり酸味料は、酸っぱさをつけたり強めたりして、味をよくするための添加物です。
酸っぱさを足すための添加物なんですね。
そのとおりです。味を引きしめる役目をしているんですよ。
24種類の中身
一括名「酸味料」で書ける24種類を、酸のなかまごとに分けると次のとおりです。


クエン酸・乳酸・リンゴ酸・酒石酸・グルコン酸・コハク酸・酢酸と、それぞれのナトリウム塩などが中心です。その他には、アジピン酸・フマル酸・リン酸が入っています。
知っている名前も、けっこうあります。
はい。クエン酸や酢酸は、台所でもおなじみの酸ですよね。
炭酸の二酸化炭素も入る
24種類の中には、二酸化炭素も入っています。炭酸飲料のシュワっとした刺激のもとになる気体です。
このように酸味料は、化学的な名前でも、身近な物質が多く含まれるのが特徴です。なお、同じ物質でも、使う目的によっては「pH調整剤」として書かれることがあります。
炭酸まで酸味料の仲間とは、知りませんでした。
意外ですよね。名前の印象だけで判断しないことが大切なんです。
中身の多くは、食べ物にもともとある酸


酸味料の中身は、食べ物にも入っているのでしょうか。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」の有機酸の表で確かめました。
表には、クエン酸・酢酸・乳酸・リンゴ酸・酒石酸・コハク酸・フマル酸・グルコン酸の欄があり、24種類のもとになっている酸の多くが、食べ物の成分として量られていました。
食べ物の成分表に、同じ酸の名前が載っているんですね。
はい。どの食べ物にどれだけあるかを、100gあたりで見ていきます。
レモンや梅干しのクエン酸
クエン酸がいちばん多かったのは、レモン果汁で、100gあたり6.5gでした。梅干しにも、100gあたり3.4g含まれています。


レモンや梅干しの酸っぱさは、おもにクエン酸によるものです。梅干しの塩分については、カリカリ梅の記事でくわしく比べています。
レモンの酸っぱさも、クエン酸なんですね。
そうなんです。酸味料のクエン酸と、名前も中身も同じ物質ですよ。
酢の酢酸
酢の酸っぱさのもとは、酢酸です。成分表では、穀物酢で100gあたり4.2g、りんご酢で4.7gでした。
酸味料の24種類には、氷酢酸と酢酸ナトリウムが入っています。氷酢酸は、酢酸の濃いものです。酢を使った調味料は、かんたん酢の記事でも調べています。
酢も、酸味料と同じなかまの酸なんですね。
はい。毎日の料理で、すでにとっている酸ということです。
ヨーグルトの乳酸
ヨーグルトの酸味は、乳酸によるものです。成分表の全脂無糖ヨーグルトでは、100gあたり0.7gでした。
乳酸も、酸味料の24種類に入っている物質です。食べ物の中で自然にできた乳酸と、添加物の乳酸は、同じ物質名で呼ばれます。
ヨーグルトにも、酸味料と同じ酸が入っているなんて意外です。
酸っぱい食べ物には、たいていこうした酸が入っているんですよ。
避けてもレモン果汁15gで缶チューハイ1本分のクエン酸


では、酸味料を避けて、レモン果汁で酸っぱさを足したらどうなるでしょうか。成分表の数字で、クエン酸の量を計算しました。
結果は、レモン果汁15gで約1.0g、缶チューハイ(レモン風味)350mL 1本で約1.05gでした。ほぼ同じ量です。
レモンにしても、クエン酸の量は変わらないんですね。
はい。計算のしかたも、あわせて見ておきましょう。
計算のしかた
レモン果汁は100gあたり6.5gなので、15gでは6.5×0.15=約0.98gです。缶チューハイ(レモン風味)は100gあたり0.3gで、成分表の備考では100mLが100.1gなので、350mLは約350.4gです。


缶チューハイ1本では、0.3×3.504=約1.05gになります。この缶チューハイは成分表の値で、特定の商品の数字ではありません。
レモン果汁15gって、少しかけるくらいの量ですね。
そうなんです。少しのレモン果汁で、缶チューハイ1本と同じくらいのクエン酸になるんですよ。
酸味料の量は表示されない
原材料表示では、酸味料をどれだけ使ったかは書かれません。そのため、商品ごとに酸味料の量を比べることはできません。
分かるのは、酸味料を避けてレモンや梅干しにしても、とっているのは同じクエン酸ということです。酸味料という名前だけで避けても、酸そのものを避けられるとは限りません。
避けても、同じ酸を食べ物からとっているんですね。
そうなんです。名前ではなく、中身で考えるのがポイントですよ。
国際機関JECFAの評価:クエン酸と乳酸は「制限しない」


では、酸味料の物質は安全なのでしょうか。FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品添加物専門家会議、JECFAのデータベースで確かめました。
評価は、クエン酸と乳酸は1日にとってよい量を「制限しない」、DL-リンゴ酸は「特定しない」です。いっぽう、アジピン酸には2025年に「毒性の再評価が必要」との指摘がありました。
物質によって、評価がちがうんですね。
はい。ひとまとめにせず、1つずつ見ていきましょう。
クエン酸と乳酸は「制限しない」
JECFAは、クエン酸と乳酸について、1日にとってよい量(ADI)を「制限しない(NOT LIMITED)」としています。どちらも1973年の評価です。


DL-リンゴ酸も、数値を決める必要がないという意味の「特定しない(NOT SPECIFIED)」とされていました。どれも、食べ物にもともと多く含まれる酸です。
レモンや梅干しの酸が、いちばん安心な評価なんですね。
そうなんです。名前は化学的でも、評価は食べ物の成分と同じ扱いなんですよ。
酒石酸とリン酸には数値の目安
L-酒石酸は、体重1kgあたり1日0〜30mgがADIです(2017年)。体重50kgなら、1日1,500mgまでの計算になります。
リン酸は、食べ物全体からとるリンとして、体重1kgあたり1日70mgが最大耐容1日摂取量とされています(1982年)。リンは食べ物にもともと多いので、添加物だけでなく食事全体で考える目安です。
数値で決まっている物質もあるんですね。
はい。数値があると、量を考える手がかりになりますよ。
アジピン酸は2025年に「再評価が必要」
アジピン酸のADIは、体重1kgあたり1日0〜5mgです。この数値は、1965年の会議で決められたものとされています。
2025年の会議でJECFAは、摂取量の見積もりは多めに出ているとしたうえで、その多くがADIを大きく超え、1つの食品を普通に食べる量でも超えるおそれがあると指摘しました。そして、毒性の再評価が必要だとしています。
アジピン酸だけは、少し気をつけたほうがよさそうですね。
はい。ただ、ラベルの「酸味料」からはアジピン酸が入っているか分からないので、気になる方はメーカーに問い合わせるのが確実ですよ。
酸味料が体に悪いかのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、酸味料について多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
酸味料は体に悪いですか
酸味料は24種類の物質をまとめた名前なので、物質ごとに評価がちがいます。国際機関JECFAは、クエン酸と乳酸の1日にとってよい量を「制限しない」としています。いっぽうアジピン酸は、2025年に毒性の再評価が必要と指摘されました。
酸味料の中身は何ですか
消費者庁の「食品表示基準について」では、クエン酸・乳酸・DL-リンゴ酸・酒石酸・グルコン酸・コハク酸・氷酢酸・アジピン酸・フマル酸・リン酸・二酸化炭素など24種類と、用途が酸味料の既存添加物が、「酸味料」とまとめて書けると定めています。
原材料の「酸味料」から、どの酸か分かりますか
「酸味料」は一括名なので、どの酸をどれだけ使ったかは、ラベルだけでは分かりません。気になる場合は、メーカーに問い合わせるのが確実です。
レモン果汁にすれば酸味料と同じ酸はとらずにすみますか
とります。文部科学省の食品成分表では、レモン果汁は100gあたりクエン酸6.5gで、15gで約1.0gです。缶チューハイ(レモン風味)350mL 1本の約1.05gとほぼ同じ量です。
炭酸も酸味料なのですか
二酸化炭素は、一括名「酸味料」で書ける24種類に入っています。炭酸飲料の刺激のもとになる気体です。
酸味料とpH調整剤はどうちがいますか
酸味料は酸っぱさをつけるため、pH調整剤は食品の酸性やアルカリ性の度合いを調整するために使う添加物の一括名です。クエン酸のように、同じ物質が目的によってどちらの名前でも書かれることがあります。
酸味料が体に悪いかのまとめ


酸味料は体に悪いのかを、消費者庁の表示のルール、文部科学省の食品成分表、国際機関JECFAの評価で確かめてきました。
答えは「酸味料は24種類の物質をまとめた名前で、多くはクエン酸や乳酸のように食べ物にもともとある酸。レモン果汁15gでも缶チューハイ1本分のクエン酸をとる。ただしアジピン酸はJECFAが再評価を求めている」です。
- 酸味料は、酸っぱさをつけたり強めたりする添加物
- 一括名「酸味料」で書けるのは、クエン酸や乳酸など24種類
- 二酸化炭素も、酸味料の24種類に入っている
- レモン果汁は100gあたりクエン酸6.5g、穀物酢は酢酸4.2g
- レモン果汁15gのクエン酸は約1.0gで、缶チューハイ1本分とほぼ同じ
- JECFAはクエン酸と乳酸を「制限しない」、アジピン酸は再評価が必要とした
酸味料という名前だけで避けても、同じ酸をレモンや酢からとっているというのが、今回いちばん大事な点でした。
酸味料のイメージが、だいぶ変わりました。
そのとおりです。名前ではなく、中身の物質ごとに評価を見る。これがいちばん大きなポイントですよ。
次に「酸味料」の文字を見かけたら、ほかの原材料もあわせて見てみてください。
同じように1つの名前で何種類も書ける添加物には、セルロースもあります。セルロースとは?危険性は?の記事もどうぞ。「セルロース」とだけ書けるのは、パルプや綿、ナタデココなど8種類でした。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。








本記事の酸味料の定義と一括名の範囲は消費者庁「食品表示基準について」(別添 添加物1-4)、食品に含まれる有機酸の量は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」炭水化物成分表 別表2(有機酸成分表)と本表(缶チューハイの比重)、物質ごとの評価はFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)のデータベースによります(2026年10月25日確認)。レモン果汁15gと缶チューハイ350mLのクエン酸量は、成分表の値から成分ラボが計算したものです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。





