コンビニのおにぎりやお弁当、ハムやかまぼこの原材料を見ると、よく出てくる「pH調整剤」。名前だけでは、何が入っているのか分かりにくい添加物です。
一方で、「pH調整剤は危険」「中身が書かれていないから怖い」という話を耳にして、避けたほうがいいのか迷っている方もいるかもしれません。
- pH調整剤が危険と言われる理由を知りたい
- 中身はどんな物質なのか気になる
- 「保存料不使用」なら安心なのか迷う
- 表示のどこを見ればよいか知りたい
そこで、消費者庁の「食品表示基準について」と不使用表示のガイドライン、厚生労働省と文部科学省の資料をつき合わせて調べています。
結果、pH調整剤を避けても、中身はクエン酸や乳酸、重曹など、食品にもある酸や身近な物質でした。
名前がこわそうで、なんとなく避けていました……。
名前のしくみを知ると、見え方が変わりますよ。順番に確かめていきましょう。
- pH調整剤という名前のしくみ
- pH調整剤にまとめられる物質
- 「保存料不使用」の表示の考え方
- 気になるときの調べ方
使う数字と決まりは、国の資料に限りました。まずは、危険と言われる理由から見ていきます。
pH調整剤が危険と言われる理由


pH調整剤に、すぐに体をこわすような成分が入っているわけではありません。それでも「危険」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、3つに分かれました。名前から中身が分からないこと、どの物質を使ったか書かれないこと、そして「無添加」の商品と比べられることです。
どれも、なんとなく気になっていたことです。
1つずつ、国の資料で確かめていきますね。
名前から中身が分からない
「pH調整剤」は、物質の名前ではなく使う目的を表す名前です。そのため、何が入っているのか想像しにくくなっています。
分からないものほど、こわく感じやすいものです。2章で、どんな物質がまとめられているのかを見ます。
名前だけだと、薬品のように聞こえます。
そう感じるのも自然です。中身を知ると、印象が変わりますよ。
どの物質を使ったか書かれない
原材料の欄に「pH調整剤」とだけ書かれていると、実際に使った物質の名前は分かりません。
これは、国の表示のルールでまとめた名前(一括名)で書いてよいと決められているからです。くわしくは5章で見ます。
隠しているわけではないんですね。
そうなんです。表示のルールに沿った書き方なんですよ。
「無添加」の商品と比べられる
お店には、「保存料不使用」「無添加」とうたう商品も並んでいます。それと比べると、添加物の多い商品が悪く見えがちです。
ただし、消費者庁は「不使用」の表示について気をつけたい例をまとめていて、4章で紹介します。
「無添加」と書いてあると、つい選んでしまいます。
その表示の意味も、あとで一緒に確かめましょう。
pH調整剤は35種類以上の物質をまとめた名前


消費者庁の「食品表示基準について」では、pH調整剤を「食品を適切なpH領域に保つ目的で使用される添加物及びその製剤」と定めています。
この名前でまとめて書ける物質として、クエン酸・乳酸・炭酸水素ナトリウム(重曹)・二酸化炭素など35種類が並び、ほかに酸味料として使う添加物も含められます。


クエン酸や重曹も入っているんですね。
そうなんです。台所で見かける名前も、たくさん入っていますよ。
酸のなかま
クエン酸・乳酸・リンゴ酸・酒石酸・フマル酸・コハク酸など、酸っぱさのもとになる酸が多く入っています。
消費者庁の「食品添加物のはなし」でも、pH調整剤は「食品のpHを調整し、品質を良くする」ものとして、DL-リンゴ酸や乳酸ナトリウムが例に挙げられています。
果物の酸っぱさと同じなかまなんですね。
そのとおりです。3章で、食品にもともとある量を見てみましょう。
炭酸とリン酸のなかま
ほかに、炭酸水素ナトリウム(重曹)・炭酸ナトリウム・二酸化炭素などの炭酸のなかまと、リン酸とその塩のなかまがあります。
リン酸塩が気になる方は、リン酸カルシウムの記事で、国の摂取量の調査を紹介しています。
炭酸も入っているのは意外でした。
pHを調整するはたらきがあるものが、まとめられているんですよ。
中華めんの「かんすい」は別の名前
同じようなアルカリ剤でも、中華めんに使うときは「かんすい」と書く決まりで、pH調整剤の定義から外されています。
かんすいについては、かんすいの記事でくわしく調べています。使う目的によって、書く名前が変わるのです。
同じ物質でも、目的で名前が変わるんですね。
そうなんです。表示の名前は、使い方を表しているんですよ。
避けても中身はクエン酸や重曹など身近な物質


pH調整剤を避けたい方もいるはずです。では、その中身の酸は、ふだんの食品にはどのくらい含まれているのでしょうか。
文部科学省の食品成分表で確かめると、レモン果汁(生)には有機酸が100gあたり6.7g含まれていました。


レモン果汁には、こんなに酸が入っているんですね。
そうなんです。クエン酸などの酸は、果物にもともとあるものなんですよ。
食品にもともとある酸
| 100gあたり | 有機酸 |
|---|---|
| レモン果汁(生) | 6.7g |
| ヨーグルト(全脂無糖) | 0.9g |
ヨーグルトにも、100gあたり0.9gの有機酸が含まれます。乳酸菌が作る乳酸も、このなかまです。
ヨーグルトの酸っぱさも、同じなかまなんですね。
そのとおりです。名前は同じでも、添加物か食品かで書き方が変わるんですよ。
国が使用を認めた添加物
pH調整剤にまとめられる物質は、どれも国が食品への使用を認めた添加物です。
「pH調整剤」と書かれているだけで、特別に危ない物質が入っているわけではありません。気になる物質があれば、5章の方法で確かめましょう。
名前だけで、こわがる必要はないんですね。
そうですね。中身を知ったうえで、選ぶのが大切ですよ。
「保存料不使用」でも日持ちのための添加物はある


「保存料不使用」と書かれた商品なら、日持ちのための添加物は入っていないと考えがちです。
消費者庁の不使用表示のガイドラインは、日持ちのために保存料以外の添加物を使いながら「保存料不使用」と表示することを、誤認させるおそれがある例に挙げていました。


保存料を使っていなくても、ほかの添加物で日持ちさせることがあるんですね。
そうなんです。「不使用」の文字だけで選ぶと、見落としが出ますよ。
消費者庁が挙げる「類型4」
ガイドラインは、「無添加」「不使用」の表示を10の類型に分けています。「類型4」は、同じはたらき・似たはたらきの別の添加物を使った食品への不使用表示です。
同じように、うま味調味料を避けた「無添加」の表示は酵母エキスの記事で紹介しています。表の言葉より、裏の原材料を見るのが確実です。
表の言葉だけで、安心していました。
裏の原材料表示を見るくせをつけると、迷いにくくなりますよ。
「無添加だから安全」ではない
同じガイドラインでは、「無添加だから体によい」「無添加だから安全」と結びつける表示も、誤認させるおそれがあるとしています。
食品添加物は、安全性の評価を受けたうえで国が使用を認めているからです。添加物の有無だけで、よい・悪いは決まりません。
無添加のほうが体によいと思いこんでいました。
添加物があるかどうかより、食品全体の中身を見ましょう。
pH調整剤の表示の見方


pH調整剤は、表示のルールでまとめた名前(一括名)で書いてよい添加物です。厚生労働省の資料では、一括名で書ける用途は14種類とされています。
pH調整剤は、乳化剤や香料、調味料などと同じく一括名で書ける用途の1つです。


乳化剤や香料も、同じしくみなんですね。
そうなんです。乳化剤については乳化剤の記事でもくわしく見ていますよ。
原材料の「/」の後ろを見る
食品の原材料表示は、「/」より前が原材料、後ろが添加物です。pH調整剤は「/」より後ろに書かれます。
「/」の後ろにいくつ添加物が並んでいるかを見ると、その食品にどんな用途の添加物が使われているかが分かります。
「/」を目印にすればいいんですね。
そのとおりです。慣れると、すぐに見分けられますよ。
気になるときはメーカーに聞く
一括名で書かれていると、どの物質を使ったかは表示から分かりません。
特定の物質が気になる方は、メーカーのお客様相談室に問い合わせるのが確実です。体質で避けたい物質がある方は、医師にも相談しましょう。
分からないときは、聞けばいいんですね。
そうですね。それがいちばん確かな方法ですよ。
pH調整剤のよくある質問


ここまでの内容をふまえて、pH調整剤について多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
pH調整剤は危険ですか
pH調整剤にまとめられる物質は、クエン酸・乳酸・重曹など、どれも国が食品への使用を認めた添加物です。「pH調整剤」と書かれているだけで、特別に危ない物質が入っているわけではありません。
pH調整剤には何が入っていますか
消費者庁の「食品表示基準について」では、クエン酸・乳酸・炭酸水素ナトリウム・二酸化炭素・リン酸など35種類と、酸味料として使う添加物がpH調整剤としてまとめて書けると定められています。
pH調整剤は何のために使うのですか
食品を適切なpHに保つためです。消費者庁の資料では、「食品のpHを調整し、品質を良くする」と説明されています。
「保存料不使用」なら安心ですか
消費者庁のガイドラインでは、日持ちのために保存料以外の添加物を使いながら「保存料不使用」と表示することを、誤認させるおそれがある例に挙げています。表の言葉より、裏の原材料を見ましょう。
どの物質を使っているか知る方法は
一括名で書かれているときは、表示から物質名は分かりません。気になる場合は、メーカーのお客様相談室に問い合わせるのが確実です。
子どもに食べさせても大丈夫ですか
pH調整剤を使った食品を食べてはいけないわけではありません。添加物の有無だけでなく、塩分や量など食事全体のバランスで考えましょう。
pH調整剤の危険性のまとめ


pH調整剤の危険性を、国の資料で確かめてきました。
答えは「pH調整剤は35種類以上の物質をまとめた名前で、中身はクエン酸や乳酸、重曹など食品にもある酸や身近な物質。どれも国が使用を認めた添加物。避けるなら、名前より中身と表示のしくみを知ってから」です。
- pH調整剤は目的を表すまとめた名前
- クエン酸・乳酸・重曹など35種類が入る
- レモン果汁には有機酸が100gで6.7g
- 「保存料不使用」でも日持ちの添加物はありうる
- 一括名で書ける用途は14種類
- 気になるときはメーカーに聞く
pH調整剤を避けても、中身はクエン酸や乳酸、重曹など、食品にもある酸や身近な物質というのが、今回いちばんの発見でした。
名前のこわさだけで、避けていたかもしれません。
そのとおりです。名前より中身と表示のしくみを知る。これがいちばん大きなポイントですよ。
次に原材料を見るときは、「/」の後ろに並ぶ添加物の名前と、その用途を確かめてみてください。
ほかの添加物では、くん液の記事でEUの決定と日本でのちがいを調べています。EUでは、燻製の代わりに使う食品は5年、風味づけに使う食品は2年で使えなくなります。
















ワインの表示で見かける添加物については、ピロ亜硫酸ナトリウムの記事もどうぞ。ワインなどの果実酒に残ってよい量は、二酸化硫黄として1kgあたり0.35g未満と決められています。
表示を省略できない添加物の例として、防ばい剤の記事もどうぞ。防かび剤は「防かび剤(イマザリル)」のように、用途名と物質名をそろえて表示されます。
コンビニ弁当の日持ちについては、コンビニ弁当の消費期限の記事もどうぞ。セブン‐イレブンとローソンが使わないとしている保存料の一覧に、pH調整剤は入っていません。
原材料表示で一緒に見かけることの多い添加物については、加工デンプンの危険性の記事もどうぞ。食品安全委員会は、加工デンプン11品目について「ADIを特定する必要はない」と評価しています。
同じように一括名で書ける添加物には、光沢剤もあります。光沢剤とは?の記事もあわせてどうぞ。「光沢剤」とだけ書かれていると、11品目のどれを使ったかは分かりません。
一括名で書ける添加物の評価のしかたについては、香料は体に悪い?の記事もあわせてどうぞ。香料は、推定摂取量を構造クラスごとの摂取許容値と比べて評価されています。
pH調整剤と同じ物質がまとめて書かれる「酸味料」については、酸味料は体に悪い?の記事もどうぞ。酸味料にまとめて書けるのはクエン酸や乳酸など24種類で、多くはレモンや酢にもともとある酸でした。
成分ラボでは身近な添加物を、国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事のpH調整剤の定義と物質の範囲は消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4(令和5年7月26日改正)、用途の説明は消費者庁「食品添加物のはなし」、一括名の用途は厚生労働省「食品添加物の表示について」(2005年)、不使用表示の考え方は消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年)、有機酸の量は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」によります(2026年10月21日確認)。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。食事制限をしている方は、医師や管理栄養士の指示を優先してください。


