粉チーズやシュレッドチーズ、アイスやドレッシングの原材料表示で見かける「セルロース」。名前だけでは、何の物質なのか分かりにくい添加物です。
先に答えを書くと、セルロースは木材パルプや綿、サツマイモなどからとった繊維で、国際機関は1日にとってよい量の上限を「特定しない」と評価しています。セルロース入りの粉チーズと、入っていない粉チーズを比べても、5gあたりのカロリーの差は1kcalでした。
- セルロースとは何なのか知りたい
- セルロースの危険性や発がん性が気になる
- 木材パルプからとると聞いて不安
- セルロースを避けると何が変わるのか知りたい
そこで、消費者庁の表示のルール、国際機関JECFAと欧州食品安全機関(EFSA)の評価、メーカー公式の栄養成分表示をつき合わせて調べています。
結果、原材料表示で「セルロース」とだけ書けるのは、パルプや綿、サツマイモ、ナタデココなど8種類でした。どれも、国際機関の評価で上限を決める必要がないとされています。
木材からとるって聞くと、なんだか心配です。
そう感じますよね。どこから何をとっているのかを、資料で順番に確かめましょう。
- 「セルロース」と表示される添加物の種類
- JECFAとEFSAによる安全性の評価
- セルロース入りと無しの粉チーズの比較
- 食物繊維としてのセルロースの扱い
使う数字や言葉は、国・国際機関の資料とメーカーの公式表示に限りました。まずは、セルロースが体に悪いと言われる理由から見ていきます。
セルロースが体に悪いと言われる理由


セルロースが「体に悪い」「危険」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、大きく2つに分かれました。木材パルプからとっていることと、1つの名前に何種類も含まれていることです。
どちらも、ラベルを見ただけでは分からないことですね。
はい。1つずつ、資料で確かめていきますね。
木材パルプからとる
消費者庁の資料では、添加物の「微結晶セルロース」や「粉末セルロース」は、パルプから得られたセルロースを主成分とするものと書かれています。
「木を食べているのでは」と不安になる方もいるはずです。ただ、どこからとったかと、体への影響は別の話です。安全性の評価は、3章でくわしく見ていきましょう。
木から、と聞くと身構えてしまいます。
その気持ちは分かります。評価の中身を知ると、見え方が変わりますよ。
1つの名前に何種類も入る
原材料表示の「セルロース」は、由来の違う何種類もの添加物を、同じ名前で書けることになっています。
そのため、ラベルの「セルロース」だけでは、何からとったものか分かりません。同じように1つの名前でまとめて書く添加物は、酸味料の記事でも紹介しています。
名前が同じでも、中身はいろいろなんですね。
そうなんです。2章で、何が含まれるのかを全部並べてみます。
セルロースとは、植物などからとった繊維の添加物


では、セルロースとは何なのでしょうか。消費者庁の「食品表示基準について」で、「セルロース」と書かれる添加物を確かめました。
「セルロース」とだけ書けるのは、既存添加物の4種類と、一般飲食物添加物の4種類の計8種類でした。このほかに、セルロースを加工した指定添加物もあります。
8種類もあるんですね。
はい。まずは、セルロースがどんな物質かから見ていきましょう。
ぶどう糖がつながった物質
JECFAのデータベースでは、セルロースはぶどう糖(グルコース)が鎖のようにつながった物質と説明されています。
同じぶどう糖からできていても、食品表示のルールでは、セルロースは食物繊維の素材として扱われ、カロリーは0kcal/gで計算されます。くわしくは5章で見ていきましょう。
ぶどう糖からできているのに、カロリーは0なんですね。
はい。表示のルールでは、カロリーとして数えないということですね。
「セルロース」と書ける8種類
既存添加物は、微結晶セルロース・粉末セルロース・微小繊維状セルロース・リンターセルロースの4種類です。原料はパルプや綿でした。


一般飲食物添加物は、海藻セルロース・サツマイモセルロース・トウモロコシセルロース・ナタデココの4種類です。一般飲食物添加物とは、ふだん食べている物を添加物の目的で使うものです。ナタデココは「発酵セルロース」とも呼ばれ、この一覧に入っています。
ナタデココも、セルロースの仲間なんですね。
意外ですよね。食べ物そのものが、添加物として使われることもあるんですよ。
加工したCMCなどは別の名前
セルロースを化学的に加工したカルボキシメチルセルロース(CMC)・メチルセルロースなど5種類は、国が指定した指定添加物です。
こちらは「セルロース」とだけは書けず、「増粘剤(CMC)」のように、使う目的の名前をいっしょに書く決まりです。同じく使う目的の名前を書く添加物は、加工デンプンの記事でも紹介しています。
加工したものは、書き方がちがうんですね。
そうなんです。ラベルを見るときの手がかりになりますよ。
セルロースの危険性は?国際機関は上限を「特定しない」


では、セルロースの安全性はどう評価されているのでしょうか。FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同食品添加物専門家会議、JECFAのデータベースと、欧州食品安全機関(EFSA)の再評価で確かめました。
評価は、微結晶セルロース・粉末セルロース・CMCなど加工したセルロースのすべてで、1日にとってよい量(ADI)を「特定しない」でした。
「特定しない」って、どういう意味ですか。
上限の数字を決める必要がない、という意味なんです。順番に見ていきますね。
JECFAは3つとも「特定しない」
JECFAは、微結晶セルロースを1997年に、ADI「特定しない(NOT SPECIFIED)」と評価しています。粉末セルロースも、1976年に同じ評価でした。


CMCやメチルセルロースなど加工したセルロース7種類は、1989年にまとめて「特定しない」とされています。どれも、上限の数値を決める必要がないと判断されたものです。
加工したものも、同じ評価なんですね。
はい。7種類をひとまとめにして評価しているんですよ。
EFSAは発がん性なし
EFSAは2018年に、セルロース類をまとめて評価し直しました。その結果では、遺伝毒性の懸念はなく、発がん性もないとされています。
さらに、数値のADIを決める必要はなく、報告されている使い方と量では安全性の懸念はないと結論しています。
発がん性の心配は、しなくていいんですね。
国際機関の評価では、そうなっています。ここは安心してよいところですよ。
「特定しない」の意味
「特定しない」は、使われている量から考えて、上限の数値を決める必要がないと判断された物質につく評価です。
つまり、「どれだけとっても大丈夫」という意味ではなく、食品に使う量では数値の線を引く必要がないという意味です。大量にとってよいという話ではない点は、覚えておきましょう。
上限がない、とは少しちがうんですね。
そうなんです。言葉の意味を正しく知っておくと、安心のしかたも変わりますよ。
セルロースを避けて粉チーズを替えても、カロリー差は1kcal


では、セルロース入りの食品を避けると、何が変わるのでしょうか。セルロースを使った粉チーズと、使っていない粉チーズを、メーカー公式の表示で比べました。
結果、5gあたりのカロリーは25kcalと24kcalで、差は1kcalでした。脂質の差も0.1gです。
セルロースを避けても、ほとんど変わらないんですね。
はい。中身の数字を、くわしく見ていきましょう。
セルロース入りの粉チーズ
明治「明治北海道十勝パルメザンチーズ」の原材料は、ナチュラルチーズ(国内製造)/セルロースです。スラッシュの後ろが添加物なので、添加物はセルロースだけでした。
5gあたりの栄養は、エネルギー25kcal、たんぱく質2.0g、脂質1.7g、食塩相当量0.11g、カルシウム49mgです。
添加物は、セルロースだけなんですね。
はい。原材料が2つだけの、シンプルな粉チーズですよ。
セルロース無しの粉チーズと比べる
森永乳業「クラフト 100%パルメザンチーズ」の原材料は、生乳、食塩で、セルロースは使われていません。


5gあたりでは、エネルギー24kcal、脂質1.6gで、明治の粉チーズとほぼ同じでした。この2つで比べるかぎり、セルロースを避けて選んでも、カロリーや脂質はほとんど変わりません。
選ぶときに、セルロースはあまり気にしなくてよさそうですね。
カロリーの面では、そうですね。ほかに差があったところも見ておきましょう。
差が大きいのはカルシウム
2つの粉チーズで差が大きかったのは、カルシウムで、明治が49mg、クラフトが72mgでした。
ただし、この差がセルロースによるものかは、公式表示からは分かりません。使っているチーズも別のものなので、カルシウムをとりたいときは、表示の数字を見て選ぶのが確実です。チーズにも使われる添加物は、リン酸カルシウムの記事で調べています。
カルシウムは、表示を見て選べばいいんですね。
はい。添加物の有無より、知りたい栄養の数字を見るのがおすすめですよ。
セルロースは食物繊維の素材として扱われる


最後に、食物繊維としてのセルロースを見ておきましょう。消費者庁の「食品表示基準について」の、栄養成分の計算のルールで確かめました。
食物繊維のカロリーを計算する表で、セルロースのエネルギー換算係数は0kcal/gとされていました。寒天やサイリウム種皮と同じ扱いです。
寒天と同じ扱いなんですね。
はい。カロリーのない食物繊維の素材として、表に並んでいるんですよ。
カロリーは0kcal/gで計算
食品のカロリーを表示するとき、セルロースは1gあたり0kcalとして計算してよいことになっています。
つまりセルロースは、食品表示のカロリーの計算では、カロリーを増やさない添加物ということです。
カロリーを気にする人にも、関係ない添加物なんですね。
そうなんです。カロリーの面では、気にしなくてよいということですね。
食物繊維の1日の目標量
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の食物繊維の目標量は、成人男性で1日20g以上、女性で18g以上です。


いっぽう、20歳以上の実際の平均は1日18.1gで、男性の目標量に届いていません。e-ヘルスネットでは、食物繊維は穀類・いも類・豆類・野菜類・きのこ類・果実類・海藻類などの植物性食品に含まれると紹介されています。
平均だと、男性の目標量に届いていないんですね。
はい。セルロースを怖がるより、毎日の食事で食物繊維をとるほうが大切ですよ。
セルロースのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、セルロースについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
セルロースとは何ですか
ぶどう糖(グルコース)が鎖のようにつながった物質です。添加物の「セルロース」は、木材パルプや綿、海藻、サツマイモ、トウモロコシ、ナタデココなどからとったもので、原材料表示では8種類が「セルロース」と書けます。
セルロースに危険性や発がん性はありますか
JECFAは微結晶セルロースと粉末セルロースの1日にとってよい量を「特定しない」と評価しています。EFSAは2018年の再評価で、遺伝毒性の懸念はなく、発がん性もないと結論しました。
木材パルプからとったセルロースは食べても大丈夫ですか
パルプからとった微結晶セルロースや粉末セルロースも、JECFAの評価はADI「特定しない」です。EFSAも、報告されている使い方と量では安全性の懸念はないと結論しています。
セルロースはなぜ粉チーズに入っているのですか
メーカーは使う目的を公表していません。JECFAのデータベースでは、セルロースの用途の分類に固結防止剤(粉が固まるのを防ぐもの)が挙げられています。
セルロースにカロリーはありますか
消費者庁の「食品表示基準について」では、セルロースのエネルギー換算係数は0kcal/gです。食品のカロリーを計算するとき、セルロースは0kcalとして扱われます。
CMCもセルロースですか
CMC(カルボキシメチルセルロース)は、セルロースを加工した指定添加物です。「セルロース」とだけは書けず、「増粘剤(CMC)」のように使う目的の名前といっしょに表示します。
セルロースとは・危険性のまとめ


セルロースとは何か、危険性はあるのかを、消費者庁の表示のルール、JECFAとEFSAの評価、メーカーの公式表示で確かめてきました。
答えは「セルロースは木材パルプや綿、サツマイモなどからとった繊維で、国際機関は上限を特定しないと評価している。セルロース入りと無しの粉チーズを比べても、カロリーの差は1kcal」です。
- セルロースは、ぶどう糖がつながった物質
- 「セルロース」と書けるのは、パルプや綿、ナタデココなど8種類
- CMCなど加工したものは「増粘剤(CMC)」のように表示する
- JECFAはADI「特定しない」、EFSAは発がん性なしと評価
- 粉チーズ5gのカロリーは、セルロース入り25kcal・無し24kcal
- セルロースのエネルギー換算係数は0kcal/g
セルロースを避けても、粉チーズのカロリーはほとんど変わらないというのが、今回いちばん大事な点でした。
セルロースへの不安が、だいぶ小さくなりました。
そのとおりです。由来の言葉だけで判断せず、評価と数字で見る。これがいちばん大きなポイントですよ。
次に「セルロース」の文字を見かけたら、ほかの原材料や栄養成分もあわせて見てみてください。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。






本記事の「セルロース」と表示される添加物の種類と表示のしかた、エネルギー換算係数は消費者庁「食品表示基準について」(別添 添加物1-3・2-1・2-3、別添 栄養成分等の分析方法等)、安全性の評価はFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)のデータベースと欧州食品安全機関(EFSA)「Re-evaluation of celluloses E 460(i)–E 469 as food additives」(2018年)、粉チーズの数値は明治・森永乳業の公式商品ページ(1食5gあたり)、食物繊維の目標量と平均摂取量は厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」によります(2026年10月28日確認)。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。






