ケーキやパフェに使う、白くてふわふわのクリーム。スーパーのクリーム売り場には、生クリームのほかに、植物性脂肪のクリームも並んでいます。
一方で、「植物性生クリームは植物油脂でできているから体に悪い」「トランス脂肪酸が心配」という話を耳にして、乳脂肪の生クリームにしたほうがいいのか迷っている方もいるはずです。
- 植物性生クリームが体に悪いと言われる理由を知りたい
- 生クリームとのちがいを知りたい
- 生クリームに替えるとカロリーはどうなるか知りたい
- トランス脂肪酸はどのくらい入っているのか知りたい
そこで、厚生労働省の乳等省令の決まり、文部科学省の食品成分表、農林水産省のトランス脂肪酸の調査をつき合わせて調べています。
結果、植物性を避けて乳脂肪の生クリームにすると、100gあたりのカロリーは353kcalから404kcalへ約1.1倍に増えることが分かりました。トランス脂肪酸は、植物油脂を含むクリーム14点の中央値が100gあたり0.30gでした。
植物性のほうが、カロリーは低いんですね。
そうなんです。ただ、砂糖を入れて泡立てると話が変わるので、順番に確かめていきましょう。
- 乳等省令の「クリーム」と植物性脂肪のクリームのちがい
- 100gあたりのカロリー・脂質・コレステロールの比較
- 砂糖入りのホイップクリームでの比較
- 植物性クリームのトランス脂肪酸の量
使う数字や言葉は、国の資料に限りました。まずは、植物性生クリームが体に悪いと言われる理由から見ていきます。
植物性生クリームが体に悪いと言われる理由


植物性生クリームが「体に悪い」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、大きく2つに分かれました。植物油脂でできていることと、トランス脂肪酸が入っているかもしれないことです。
どちらも、よく聞く心配です。
1つずつ、国の資料で確かめていきますね。
植物油脂でできている
植物性脂肪のクリームは、乳脂肪の代わりに植物性の脂肪を使ったクリームです。牛乳からつくる生クリームとは、原料がちがいます。
「油でできたクリーム」と聞くと、体に悪そうに感じる方もいるはずです。ただ、原料がちがうことと、体に悪いかどうかは別の話です。2章で、何がちがうのかを整理していきましょう。
油と聞くと、身構えてしまいます。
その気持ちは分かります。数字で比べると、見え方が変わりますよ。
トランス脂肪酸が心配
農林水産省の「すぐにわかるトランス脂肪酸」によると、トランス脂肪酸は、油脂の加工や精製でできることがある脂肪酸です。日常的にとりすぎると、心臓病のリスクが高まることが示されています。
ただし、クリームにどれだけ入っているのかは、ラベルには書かれていないことがほとんどです。5章で、農林水産省の調査の数字を見ていきます。同じ心配は、マーガリンの記事でも調べています。
どれくらい入っているのか、知りたいです。
国の調査に、ちょうどいい数字がありましたよ。
植物性生クリームとは、乳等省令の「クリーム」とは別の食品


では、植物性生クリームとは何なのでしょうか。厚生労働省の「クリーム製造の衛生管理のための手引書」と、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」で確かめました。
乳等省令の「クリーム」は、生乳や牛乳から乳脂肪分以外の成分を除いたもので、乳脂肪分18.0%以上と決まっていました。植物性の脂肪を使ったクリームは、この定義には当てはまりません。
同じ「クリーム」でも、別の食べ物なんですね。
はい。決まりのうえでは、別のものとして扱われているんですよ。
乳等省令の「クリーム」
乳等省令では、クリームを「生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」と定めています(第2条第14項)。


成分の規格は、乳脂肪分18.0%以上です。食品成分表では、このクリームの別名を「生クリーム」「フレッシュクリーム」としています。
生クリームは、牛乳の脂肪だけでできているんですね。
そのとおりです。だから「乳脂肪」と分類されているんですよ。
植物性脂肪のクリーム
食品成分表には、「クリーム 植物性脂肪」という食品も載っています。別名は「植物性生クリーム」です。
ほかに、乳脂肪と植物性脂肪の両方を使ったクリームもあります。成分表の値では、脂質42.1gのうち、乳脂肪由来が22.5g、植物性脂肪由来が19.6gでした。
両方を混ぜたクリームもあるんですね。
はい。3つを並べて比べると、ちがいがよく分かりますよ。
原材料表示で見分ける
お店で買うときは、原材料表示に「植物油脂」があるかを見ると見分けられます。名前に「ホイップ」とあるだけでは、乳脂肪か植物性かは分かりません。
植物性脂肪のクリームの一例は、らくらくホイップの記事でくわしく調べています。名前より、原材料表示で確かめるのが確実です。
ラベルの裏を見れば分かるんですね。
そうなんです。名前のイメージだけで選ばないのがコツですよ。
植物性を避けて生クリームにすると、カロリーは約1.1倍


では、植物性を避けて生クリームにすると、何が変わるのでしょうか。食品成分表の100gあたりの値で、3種類のクリームを比べました。
結果、エネルギーは植物性脂肪が353kcal、乳脂肪(生クリーム)が404kcalで、生クリームのほうが約1.1倍でした。脂質もコレステロールも、生クリームのほうが多い結果です。
植物性を避けたら、カロリーが増えるんですね。
はい。数字をくわしく見ていきましょう。
100gで比べる
100gあたりのエネルギーは、乳脂肪404kcal、乳脂肪・植物性388kcal、植物性脂肪353kcalでした。


404÷353で計算すると、生クリームは植物性脂肪のクリームの約1.1倍です。植物油脂を避けて生クリームを選ぶと、カロリーはかえって増えることになります。
植物性のほうが、軽いんですね。
この3つで比べるかぎりは、そうなります。脂質の量も見ておきましょう。
脂質は3.5g多い
脂質は、乳脂肪43.0g、植物性脂肪39.5gで、生クリームのほうが3.5g多い結果でした。
農林水産省は、トランス脂肪酸という1つの成分だけでなく、脂質そのものをとりすぎないことを優先すべきという考えを示しています。生クリームに替えると、その脂質がかえって増えるということです。
脂質を減らしたいなら、生クリームはむしろ多いんですね。
そうなんです。名前のイメージと、数字は逆でした。
コレステロールは約3倍
コレステロールは、乳脂肪64mg、植物性脂肪21mgでした。64÷21で、生クリームは約3倍です。
この数字で見ると、植物性を避けて生クリームにすると、コレステロールは約3倍に増えることになります。
コレステロールまで、生クリームのほうが多いんですね。
はい。避けたつもりが、別の数字が増えるということですね。
砂糖入りのホイップクリームでは、カロリーの差はほとんどない


ケーキに使うクリームは、砂糖を入れて泡立てたホイップクリームです。食品成分表には、クリームにグラニュー糖を加えて泡立てたホイップクリームの値も載っていました。
ホイップクリームで比べると、乳脂肪409kcal、植物性脂肪399kcalで、差は10kcalでした。砂糖が入ると、カロリーの差はほとんどなくなります。
泡立てると、ほとんど同じになるんですね。
はい。炭水化物は3つとも同じ12.9gでした。
砂糖入りのホイップで比べる
ホイップクリーム100gあたりのエネルギーは、乳脂肪409kcal、乳脂肪・植物性394kcal、植物性脂肪399kcalでした。炭水化物は、3つとも12.9gです。


ケーキのクリームとして食べる場合は、乳脂肪か植物性かより、食べる量のほうがカロリーを左右するということです。ケーキ1切れのクリームのカロリーは、らくらくホイップの記事で計算しています。
量を気にするほうが、大事なんですね。
そのとおりです。どちらを選んでも、たくさん食べればカロリーは増えますからね。
コレステロールの差は残る
いっぽうで、コレステロールは乳脂肪110mg、植物性脂肪5mgで、差は大きいままでした。
カロリーの差はほとんどなくても、コレステロールの量は植物性のほうがずっと少ないという結果です。気にする数字によって、選び方が変わるということですね。
何を気にするかで、選ぶほうが変わるんですね。
はい。自分が気にしている数字を、表示で確かめるのが確実ですよ。
植物性クリームのトランス脂肪酸は100gあたり0.30g


最後に、いちばん心配されているトランス脂肪酸を見ていきます。農林水産省の平成26・27年度の調査で、市販のクリーム類を調べた数字がありました。
「クリームの代替として植物油脂を含む製品」14点では、トランス脂肪酸の中央値が100gあたり0.30gでした。いっぽうで、最大3.1gの製品もあり、商品によって差があります。
商品によって、ずいぶんちがうんですね。
はい。調査の数字と、国の考え方を順番に見ていきましょう。
植物性クリームの量
調査した14点のトランス脂肪酸は、中央値0.30g、最小0.06g〜最大3.1g(100gあたり)でした。脂質の中央値は32g、飽和脂肪酸の中央値は25gです。


中央値とは、数字を小さい順に並べたときに真ん中にくる値です。多くの商品は0.30g前後ですが、なかには10倍ほど多い商品もあるということになります。
全部が同じではないんですね。
そうなんです。商品ごとの量を知りたいときは、メーカーに問い合わせるのが確実ですよ。
日本人がとっている量
農林水産省は、日本人が食品からとっているトランス脂肪酸を1人1日0.92〜0.96gと推定しています(2005〜2007年度の調査研究)。平均総エネルギー摂取量の0.44〜0.47%です。
食品安全委員会は、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり」「通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論しています。
日本人の多くは、とりすぎではないんですね。
はい。ただ、脂質を多くとる人はトランス脂肪酸も多くなる、とも書かれていましたよ。
国は脂質と塩分を優先
農林水産省は、トランス脂肪酸だけに着目するのではなく、とりすぎの傾向がある脂質そのものや塩分を控えることを優先すべきという考えを示しています。
つまり、植物性か乳脂肪かより、クリームを食べる量で脂質を控えるほうが大切です。乳脂肪と植物性のちがいは、クーリッシュの記事でもアイスで比べています。
結局は、食べる量なんですね。
そのとおりです。どちらのクリームも、量を決めて楽しむのがいちばんですよ。
植物性生クリームのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、植物性生クリームについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
植物性生クリームは体に悪いですか
文部科学省の食品成分表では、植物性脂肪のクリームは100gあたり353kcalで、乳脂肪の生クリーム(404kcal)より少ない値です。トランス脂肪酸は、農林水産省の調査で植物油脂を含むクリーム14点の中央値が100gあたり0.30gでした。
生クリームと植物性生クリームのちがいは何ですか
乳等省令の「クリーム」は、生乳や牛乳から乳脂肪分以外の成分を除いたもので、乳脂肪分18.0%以上と決まっています。植物性脂肪のクリームは、植物性の脂肪を使ったもので、この定義には当てはまりません。
植物性を避けて生クリームにすると何が変わりますか
食品成分表の100gあたりの値では、エネルギーは353kcalから404kcalへ約1.1倍、脂質は39.5gから43.0g、コレステロールは21mgから64mgへ約3倍になります。
ホイップクリームにしても差はありますか
砂糖を加えて泡立てたホイップクリームでは、エネルギーは乳脂肪409kcal、植物性脂肪399kcalで、差は10kcalです。コレステロールは乳脂肪110mg、植物性脂肪5mgで、差は大きいままです。
植物性クリームのトランス脂肪酸はどのくらいですか
農林水産省の平成26・27年度の調査では、クリームの代替として植物油脂を含む製品14点の中央値が100gあたり0.30g、最小0.06g〜最大3.1gでした。
トランス脂肪酸はどのくらい気にすればよいですか
食品安全委員会は、日本人の大多数はエネルギー比1%未満で、通常の食生活では健康への影響は小さいと結論しています。農林水産省は、トランス脂肪酸より、脂質そのものと塩分を控えることを優先すべきとしています。
植物性生クリームは体に悪いかのまとめ


植物性生クリームは体に悪いのかを、乳等省令の決まり、文部科学省の食品成分表、農林水産省のトランス脂肪酸の調査で確かめてきました。
答えは「植物性生クリームは乳等省令のクリームとは別の食品で、100gあたりのカロリーは生クリームより少ない。植物性を避けて生クリームにすると、カロリーは約1.1倍、コレステロールは約3倍になる」です。
- 乳等省令の「クリーム」は乳脂肪分18.0%以上の乳脂肪だけのもの
- 植物性生クリームは、植物性の脂肪を使った別の食品
- 100gのカロリーは植物性353kcal・生クリーム404kcalで約1.1倍
- 砂糖入りのホイップでは409kcalと399kcalで差は10kcal
- 植物油脂を含むクリームのトランス脂肪酸は中央値0.30g(100gあたり)
- 国はトランス脂肪酸より、脂質そのものと塩分を控えることを優先
植物性を避けて生クリームにしても、カロリーや脂質は減らないというのが、今回いちばん大事な点でした。
植物性のイメージが、だいぶ変わりました。
そのとおりです。原料の名前より、数字と食べる量で選ぶ。これがいちばん大きなポイントですよ。
次にクリームを買うときは、原材料表示と栄養成分表示もあわせて見てみてください。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。






本記事の「クリーム」の定義と成分規格は厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れたクリーム製造の衛生管理のための手引書」(乳等省令第2条第14項)、クリーム類の栄養成分は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」、トランス脂肪酸の濃度は農林水産省「平成26・27年度調査結果」、日本人の摂取量と食品安全委員会の評価・国の考え方は農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」によります(2026年10月29日確認)。約1.1倍・約3倍の倍率は、成分表の値から成分ラボが計算したものです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。






