なすの漬物の色止めや、ふくらし粉の材料として使われる「ミョウバン」。昔から和食の下ごしらえにも使われてきた食品添加物です。
一方で、「ミョウバンはアルミニウムだから毒性がある」「認知症の原因になるらしい」という話を耳にして、ミョウバン入りのお菓子やパンを避けようか迷っている方もいるかもしれません。
- ミョウバンに毒性があるのか知りたい
- アルミニウムが体にたまらないか不安
- 子どもに食べさせて大丈夫か気になる
- ミョウバン入りの食品を避けるべきか迷う
そこで、厚生労働省のアルミニウムの摂取量調査と、食品安全委員会の評価をもとに、日本人がどの食品からどれだけアルミニウムをとっているのかを確かめました。
結果、ミョウバンが使われるお菓子とパンを避けても、大人が加工食品からとるアルミニウムは約1割しか減らないことが分かりました。
ミョウバンを避ければ、アルミニウムはぐっと減ると思っていました……。
実は、国の基準が変わってから状況が大きく変わったんです。数字で順番に確かめていきましょう。
- ミョウバンとは何か・何に使われるか
- アルミニウムの毒性と1週間の上限
- 基準改正で子どもの摂取量はどう変わったか
- どの食品からアルミニウムをとっているか
使う数字は、厚生労働省・消費者庁・食品安全委員会の資料に限りました。まずは、なぜ毒性があると言われるのかから見ていきます。
ミョウバンに毒性があると言われる理由


ミョウバン(明礬)は、正式には「硫酸アルミニウムカリウム」という食品添加物です。水分を除いたものは「焼ミョウバン」と呼ばれます。名前のとおり、成分にアルミニウムを含んでいます。
「毒性がある」と言われる理由をたどると、3つに分かれました。アルミニウムそのもの、認知症の噂、そして子どもへの影響です。
どれも、なんだかこわい話ですね。
1つずつ、国の資料で確かめていきましょう。
アルミニウムを含んでいる
ミョウバンはアルミニウムを含む添加物です。そのため、とりすぎを防ぐ目的で、アルミニウムには国が「1週間の上限」を決めています。
ただ、どんな物質でも問題になるかどうかは量で決まります。3章で、国が決めている「1週間の上限」を見ます。
アルミ鍋のアルミと同じものですか。
同じ元素です。食べものからとる量を、国が調べているんですよ。
認知症の原因という噂
「アルミニウムがアルツハイマー病の原因になる」という話は、今もよく見かけます。
厚生労働省のQ&Aでは、国際機関のJECFAや欧州食品安全機関(EFSA)でも、食品中のアルミニウムとアルツハイマー病の因果関係を証明する情報は認められないと評価されていると書かれています。
因果関係は、確かめられていないんですね。
そうなんです。ただ、量の上限はきちんと決められていますよ。
子どもは多くとっていた
実は、子どもがアルミニウムを多くとっていたことは、国の調査で分かっていました。2011〜12年度の調査では、1〜6歳の上位5%が国際機関の上限を上回っていたのです。
ほかのサイトでは「食品安全委員会も懸念はないと判断」と書かれていることもありますが、実際には国が基準を変えて、量を減らしたというのが正確な経緯です。4章で詳しく見ます。
問題がなかったわけではないんですね。
そうなんです。だからこそ、今の数字を見ることが大切なんですよ。
ミョウバンとは?何に使われる添加物か


ここからは、ミョウバンがどんな添加物かを整理します。厚生労働省の「食品中のアルミニウム」のページと、令和2〜3年度の摂取量調査を見ていきます。
結果、ミョウバンは「膨脹剤」「ベーキングパウダー」とまとめて書かれることもあり、名前だけでは見分けにくいことが分かりました。


「ミョウバン」と書いていないこともあるんですね。
そうなんです。表示のルールで、まとめた名前が使えるんですよ。
膨脹剤や色止めに使われる
| 用途 | 使われる食品の例 |
|---|---|
| 膨脹剤 | ベーキングパウダーの成分として、蒸しまんじゅう・ケーキなど |
| 色止め | なすの漬物など |
| 品質安定剤 | 食品の形や食感を保つ |
| その他 | はるさめの製造など |
ミョウバンは膨脹剤、色止め剤、品質安定剤などとして使われます。ベーキングパウダーは、重曹にミョウバンなどの酸剤を混ぜたものです。
袋の表示はこう書かれる
ミョウバンは、「ミョウバン」「カリウムミョウバン」という簡略名で書かれるほか、「膨脹剤」「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」という一括名で書かれることもあります。
つまり、袋に「ミョウバン」と書かれていなくても、膨脹剤として入っている場合があります。どの膨脹剤かまでは、表示だけでは分かりません。
表示を見ても、全部は分からないんですね。
そうなんです。だから、量の調査が役に立つんですよ。
使い方には国の基準がある
硫酸アルミニウムカリウムには使用基準があり、みそには使ってはいけないと決められています。
さらに2018年11月30日から、菓子・生菓子・パンは1kgにつきアルミニウムとして0.1g以下という上限が加わりました。経過措置の1年を過ぎ、今はこの上限が守られています。
上限ができたのは、わりと最近なんですね。
子どもの摂取量を減らすために作られたんです。次の章で理由を見ますよ。
アルミニウムの毒性と1週間の上限


次は、アルミニウムをどれだけとっても大丈夫なのかを確かめます。物差しになるのは「耐容週間摂取量」です。
結果、食品安全委員会が決めた上限は、体重1kgあたり1週間に2.1mgでした。体重16.5kgの子どもなら1週間に約35mg、58.8kgの大人なら約124mgです。
体重で上限が変わるんですね。
そうなんです。だから、体の小さい子どもほど気をつける必要があるんですよ。
上限は体重1kgあたり週2.1mg
| 評価した機関 | 1週間の上限(体重1kgあたり) | 決めた年 |
|---|---|---|
| JECFA(国際機関) | 2mg | 2011年 |
| 食品安全委員会(日本) | 2.1mg | 2017年 |
耐容週間摂取量は、一生涯とり続けても健康への悪影響がないと推定される1週間あたりの量です。超えたらすぐに体に悪いという意味ではありません。
体重別の上限の量
| 体重 | 1週間の上限 | 1日あたり |
|---|---|---|
| 16.5kg(1〜6歳の平均) | 約35mg | 約5mg |
| 58.8kg(20歳以上の平均) | 約124mg | 約18mg |
大人の上限は1日あたり約18mgです。あとで見るように、大人が加工食品からとる量は1日約1mgなので、上限まではかなり余裕があります。
とりすぎると何が起きる?
上限は、一生涯とり続けても健康への悪影響がないと推定される量です。上限を少し超えた日があっても、すぐに体に悪いという意味ではありません。
認知症との関係については、厚生労働省のQ&Aのとおり、因果関係を証明する情報は認められていません。腎臓の病気がある方は、医師の指示にしたがってください。
上限は、余裕をもって決めてあるんですね。
そうなんです。上限と実際の量を比べるのが大事ですよ。
子どものアルミ摂取は基準改正で4分の1に


ここで、子どもの摂取量がどう変わったかを見ます。2011〜12年度の調査と、基準改正後の2020〜21年度の調査を並べました。
結果、1〜6歳が加工食品からとるアルミニウムは、1日1.80mgから0.50mgへ、約4分の1に減っていました。


4分の1は、大きく減りましたね。
お菓子とパンの基準が、しっかり効いた結果なんですよ。
2011〜12年度は上位5%が上限超え
2011〜12年度の調査では、1〜6歳の平均は上限の約4割でした。ところが、食べる量が多い上位5%の子どもは、国際機関の上限を上回る計算になりました。
多かったのは、お菓子類(1日0.83mg)とパン・穀類(0.56mg)です。蒸しまんじゅうやケーキなど、ふくらし粉を使う食品で多く見つかりました。
お菓子が多い子ほど、とりやすかったんですね。
そうなんです。それで、まずお菓子とパンが見直されたんですよ。
2013年から業界に低減を依頼
この結果を受けて、厚生労働省は2013年7月1日に、業界団体へアルミニウムの使用量を減らすよう依頼しました。
そして2018年11月30日に使用基準を改正し、菓子・生菓子・パンに1kgあたり0.1gの上限を決めました。ケーキドーナッツやバターケーキでは、前回0.1g/kgを超える製品がありましたが、今回はどちらも上限を大きく下回っています。
依頼から基準まで、5年かけたんですね。
調べて、評価して、決める。順番に進めた結果ですよ。
2020〜21年度は上位1%でも上限の3割以下
| 1〜6歳(加工食品由来) | 2011〜12年度 | 2020〜21年度 |
|---|---|---|
| 1日の摂取量(平均) | 1.80mg | 0.50mg |
| 上限に対する割合(平均) | 38% | 10% |
| 上限に対する割合(上位5%) | 97% | 21% |
| お菓子類からの量 | 0.83mg | 0.04mg |
| パン・穀類からの量 | 0.56mg | 0.07mg |
2020〜21年度は、食べる量がいちばん多い上位1%でも、上限の30%以下でした。子どもの摂取量は、基準改正で大きく下がったと言えます。
お菓子とパンを避けてもアルミは1割しか減らない


「それでも心配だから、ミョウバンが入りそうなお菓子やパンは避けよう」と考える人もいるでしょう。そこで、2020〜21年度の調査で、大人のアルミニウムがどの食品群から来ているかを見ました。
結果、加工食品からとる1日1.08mgのうち、お菓子とパンの分は合わせて0.11mg、約1割でした。


お菓子とパンは、ほんの少しなんですね。
基準改正で、もう十分に減っているんです。表で見てみましょう。
大人は調味料・飲み物の群がいちばん多い
| 食品群(加工食品) | 大人(20歳以上) | 子ども(1〜6歳) |
|---|---|---|
| 調味料・嗜好飲料 | 0.48mg | 0.16mg |
| いも類・豆類・種実類 | 0.27mg | 0.21mg |
| 果実類・野菜類・海藻類 | 0.18mg | 0.01mg |
| 穀類(パンなど) | 0.08mg | 0.07mg |
| 魚介類・肉類・卵類 | 0.04mg | 0.02mg |
| 砂糖類・菓子類 | 0.03mg | 0.04mg |
| 合計 | 1.08mg | 0.50mg |
大人でいちばん多いのは調味料・嗜好飲料の群(0.48mg)でした。お菓子とパンを避けても、減らせるのは大人で約1割、子どもで約2割です。
はるさめと漬物は1kgあたりの量が多い
個別の食品では、はるさめ(乾)が1kgあたり273mg、なすの塩漬が51mgと多めでした。お菓子・パンの上限(1kgあたり100mg)は、はるさめや漬物には当てはまりません。


乾燥はるさめ10gなら約2.7mgで、体重16.5kgの子どもの1週間の上限(約35mg)の約8%です。毎日たくさん食べるのでなければ、上限を超える量ではありません。
はるさめは意外でした。でも、量を考えれば大丈夫そうですね。
そうなんです。どの食品も、量と回数で考えましょう。
避けるより、偏らないことが大切
2011〜12年度の調査報告では、アルミニウム含有量の高い食品を毎日食べ続けるのでなければ、上限を超えることはないとまとめられています。
ミョウバンを避けることにこだわるより、同じ食品ばかりに偏らないほうが、アルミニウムの量を抑えるには効果的です。添加物を避けても量があまり変わらない例は、アルギン酸エステルの記事やグリシンの記事でも確かめています。
避けるより、いろいろ食べるほうが大事なんですね。
そのとおりです。添加物だけを見ないことがポイントですよ。
ミョウバンのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、ミョウバンについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
ミョウバンに毒性はありますか
ミョウバンはアルミニウムを含み、とりすぎれば体に影響が出る可能性があります。そのため、食品安全委員会は体重1kgあたり1週間2.1mgという上限を決めています。
2020〜21年度の調査では、加工食品からとる量は大人で上限の約6%、子どもで約10%でした。
ミョウバンは体にたまりますか
国が決めている上限は、一生とり続けても健康への悪影響がないと推定される量です。2020〜21年度の調査では、加工食品からとる量は大人で上限の約6%でした。
腎臓の病気がある方は、医師の指示にしたがってください。
ミョウバンで認知症になりますか
厚生労働省のQ&Aでは、JECFAやEFSAの評価として、食品中のアルミニウムとアルツハイマー病の因果関係を証明する情報は認められないとされています。
子どもに食べさせても大丈夫ですか
2011〜12年度は1〜6歳の上位5%が国際機関の上限を上回っていましたが、2018年の基準改正のあと、上位1%でも上限の30%以下に下がりました。
同じお菓子ばかりにならないよう、いろいろな食品を食べることが大切です。
ミョウバンはどうやって見分けますか
「ミョウバン」「カリウムミョウバン」と書かれるほか、「膨脹剤」「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」とまとめて書かれることもあります。
そのため、表示だけではミョウバンが入っているかどうか分からない場合があります。
アルミフリーのベーキングパウダーにしたほうがいいですか
気になる方は選んでもかまいません。ただ、大人が加工食品からとるアルミニウムのうち、お菓子とパンの分は約1割です。
手作りのお菓子をたくさん作る家庭では、アルミフリーを選ぶと安心感につながるでしょう。
ミョウバンの毒性はやばいかのまとめ


ミョウバンの毒性はやばいのかを、厚生労働省の摂取量調査と食品安全委員会の評価で確かめてきました。
答えは「アルミニウムには上限があるが、今の日本人の摂取量は上限を大きく下回っている。お菓子とパンを避けても、減るのは約1割」です。
- ミョウバン=硫酸アルミニウムカリウム
- 上限は体重1kgあたり週2.1mg
- 2018年にお菓子・パンへ上限ができた
- 子どもの摂取量は約4分の1に
- 大人は上限の約6%
- お菓子とパンの分は大人で約1割
ミョウバンが使われるお菓子とパンを避けても、大人のアルミニウムは約1割しか減らないというのが、今回いちばんの発見でした。
避けなくても、もう十分に減っていたんですね。
そのとおりです。添加物の名前より、量と偏りを見る。これがいちばん大事なポイントですよ。
次にミョウバンや膨脹剤の表示を見かけたときは、「量はもう減っている」ことを思い出してみてください。
同じ国の摂取量調査を使った記事では、リン酸カルシウムの記事もあります。加工食品からとるリンのうち、リン酸塩の表示がある食品の分は約1割でした。




ほかの添加物の使用基準が気になる方は、ピロ亜硫酸ナトリウムの記事もあわせてどうぞ。ごま・豆類・野菜には使ってはならないと決められている添加物です。
成分ラボでは身近な食品を、メーカーの表示と国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事のアルミニウムの摂取量は、厚生労働省「平成23〜24年度マーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査の結果」と「令和2〜3年度マーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査の結果」の値です。耐容週間摂取量と使用基準は厚生労働省「食品中のアルミニウム」、アルツハイマー病に関する記述は厚生労働省「アルミニウムを含む食品添加物について(Q&A)」によります(2026年10月14日確認)。体重別の上限とはるさめ10gあたりの量は、資料の値から単純に計算しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。腎臓の病気がある方や治療中の方は、医師の指示を優先してください。







