レモンやグレープフルーツ、バナナの売り場で見かける「防かび剤(イマザリル)」の表示。「防ばい剤」と書かれていることもあります。
一方で、「防ばい剤は体に悪い」「輸入の果物は皮ごと食べないほうがいい」という話を耳にして、買ってよいのか迷っている方もいるかもしれません。
- 防ばい剤とは何か知りたい
- イマザリルはどのくらい残っていいのか気になる
- 1日にどのくらいまでなら大丈夫か知りたい
- 気になるときの見分け方と対策が知りたい
そこで、消費者庁の使用基準と表示のルール、食品安全委員会の資料、東京都の食品安全FAQをつき合わせて調べています。
結果、イマザリルがかんきつ類に残ってよい量は1kgあたり5mgまで。上限いっぱい残っていたとしても、体重50kgの人の1日の許容量はかんきつ類約250g分でした。ばら売りの果物でも、防かび剤は表示が必要です。
レモンを皮ごと使うとき、いつも気になっていました……。
上限と表示のルールを知れば、選び方が決まりますよ。順番に確かめていきましょう。
- 防ばい剤とはどんな添加物か
- イマザリルなどが残ってよい量の上限
- 1日に摂ってよい量(ADI)での計算
- 表示の見方と、気になるときの対策
使う数字は、国と自治体の資料に限りました。まずは、危ないと言われる理由から見ていきます。
防ばい剤が危ないと言われる理由


防ばい剤が「危ない」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、3つに分かれました。果物に直接使う添加物であること、イマザリルは農薬の成分でもあること、名前がむずかしいことです。
どれも、なんとなく不安になる理由ですね。
1つずつ、国の資料で確かめていきますね。
果物に使う添加物だから
防ばい剤は、かんきつ類やバナナなど、使ってよい果物が決まっている添加物です。
加工食品ではなく、果物そのものに使うので、気になりやすいものです。2章で、使える果物を見ます。
果物に直接、というのが気になります。
そうですよね。だからこそ、使える果物と量が細かく決まっているんですよ。
農薬の成分でもあるから
食品安全委員会のハザード概要シートでは、イマザリルは農薬(殺菌剤)だが、国内では農薬登録されていないと紹介されています。
日本では、かんきつ類とバナナに使う食品添加物として使用基準が決められています。3章で、上限を確かめましょう。
農薬と聞くと、ちょっとこわいです。
日本では添加物として、残ってよい量の上限が決まっています。そこを見ていきましょう。
名前がむずかしいから
防ばい剤には、イマザリル、オルトフェニルフェノール、チアベンダゾールなど、長いカタカナの名前が並びます。


名前だけでは何なのか分からないので、不安に感じやすいものです。2章で、どれが何に使えるかを整理します。
名前を見ただけで、身構えてしまいます。
名前より、使える果物と上限を見るのが近道ですよ。
防ばい剤は防かび剤と同じ、果物に使う添加物


防ばい剤とは、どんな添加物なのでしょうか。食品表示基準と消費者庁の使用基準で確かめました。
食品表示基準では、「防かび剤又は防ばい剤」が1つの用途名として並んでいます。呼び方がちがうだけで、同じ用途の添加物です。


防ばい剤と防かび剤は、同じものだったんですね。
そうなんです。表示ではどちらの書き方もありますよ。
使える物質は10種類
消費者庁の「食品表示基準について」では、防かび剤または防ばい剤として、アゾキシストロビン、イマザリル、オルトフェニルフェノールなど10種類の名前が並んでいます。
どれも、使ってよい食品と、残ってよい量の上限が使用基準で決まっています。
10種類もあるんですね。
はい。ただ、どれも使える果物が限られているんですよ。
使える果物は物質ごとに決まっている
使用基準によると、イマザリルはかんきつ類(みかんを除く)とバナナ以外の食品に使用してはならないと決められています。
オルトフェニルフェノールはかんきつ類だけ、ジフェニルはグレープフルーツ・レモン・オレンジ類の容器に入れる紙片に浸み込ませて使う場合だけです。
物質ごとに、使える果物がちがうんですね。
そのとおりです。決まった果物以外には使えないんですよ。
イマザリルの上限はかんきつ類1kgで5mg


では、イマザリルはどのくらい残ってよいのでしょうか。消費者庁の使用基準で確かめました。
結果、かんきつ類(みかんを除く)は1kgあたり0.0050g(5mg)、バナナは1kgあたり0.0020g(2mg)を超えて残らないように使う決まりでした。


1kgで5mgということは、かなり少ない量なんですね。
そうなんです。1kgの果物に対して、1000分の5グラムまでという決まりですよ。
ほかの防かび剤の上限
| 物質 | 使える食品 | 1kgあたりの上限 |
|---|---|---|
| イマザリル | かんきつ類(みかんを除く) | 0.0050g(5mg) |
| イマザリル | バナナ | 0.0020g(2mg) |
| オルトフェニルフェノール | かんきつ類 | 0.010g(10mg) |
| チアベンダゾール | かんきつ類 | 0.010g(10mg) |
| チアベンダゾール | バナナ | 0.0030g(3mg) |
| ジフェニル | グレープフルーツ・レモン・オレンジ類(容器の紙片) | 0.070g(70mg)未満 |
チアベンダゾールは、バナナの場合、果肉1kgあたり0.0004gという上限も別に決まっています。
果肉の上限まで、別に決まっているんですね。
はい。皮と果肉で分けて決めている物質もあるんですよ。
上限は「最大」の値
使用基準の数字は、これを超えて残ってはいけないという上限です。
実際に残っている量は、果物ごとにちがい、上限より少ないこともあります。4章では、あえて上限いっぱいで計算してみます。
上限いっぱい入っているわけではないんですね。
そのとおりです。いちばん多い場合として考えると分かりやすいですよ。
1日に摂ってよい量は体重50kgで1.25mg


では、1日にどのくらいまでなら摂ってよいのでしょうか。食品安全委員会のハザード概要シートで確かめました。
イマザリルのADI(1日に摂ってよい量)は、体重1kgあたり0.025mgとされていました。体重50kgの人なら、1日1.25mgです。


体重50kgで1.25mgなんですね。
そうなんです。体重が軽い子どもは、そのぶん少なくなりますよ。
上限いっぱいならかんきつ類約250g分
| 体重 | 1日のADI | 上限いっぱい残ったかんきつ類なら |
|---|---|---|
| 30kg | 0.75mg | 約150g |
| 50kg | 1.25mg | 約250g |
| 60kg | 1.5mg | 約300g |
上限の1kgあたり5mgで割ると、体重50kgの人のADIは、かんきつ類約250g分にあたります。
ADIは、毎日一生食べ続けても健康に影響が出ないとされる量の目安です。
毎日250gも食べることは、あまりないですね。
そうですね。しかもこれは、上限いっぱい残っていた場合の計算ですよ。
実際の摂取量はADIの20%未満
同じハザード概要シートでは、推定一日摂取量はADIに対して20%未満で、食品を介しての摂取は現時点で問題となるものではないと判断されたと紹介されています。
東京都の食品安全FAQも、使用基準を守ったかんきつ類についている防かび剤の量は、健康に影響を及ぼすような量ではないとしています。
実際に摂っている量は、ADIよりずっと少ないんですね。
そうなんです。それでも気になる場合の対策は、5章で紹介しますね。
表示の「防かび剤」で使ったかどうかを確かめる


防ばい剤を使った果物は、どう見分ければよいのでしょうか。食品表示基準と東京都の食品安全FAQで確かめました。
防かび剤は、「防かび剤(イマザリル)」のように、用途名と物質名をそろえて表示する決まりです。


表示を見れば、使ったかどうか分かるんですね。
そのとおりです。ばら売りでも表示が必要なのがポイントですよ。
ばら売りの果物でも表示が必要
消費者庁の「食品表示基準について」には、容器包装に入れないで販売される食品のうち、添加物の表示を要する添加物一覧があり、その1番目が防かび剤または防ばい剤です。
袋に入っていない果物でも、防かび剤は表示の対象になっています。ほかの添加物の表示の決まりは、pH調整剤の記事でも紹介しています。
袋に入っていない果物でも、表示があるんですね。
はい。気になる方は、売り場で「防かび剤」の文字を探してみてください。
表示があっても検出されないことがある
東京都健康安全研究センターが2018〜2020年度に都内で流通したかんきつ類86検体を調べた調査では、ライム1検体を除き、すべての検体の表示に2種類以上の防かび剤の記載がありました。
一方で、表示されたすべての防かび剤が検出されないケースも多数ありました。使う可能性がある防かび剤を、パッケージに一律に記載していることが理由の1つと考えられています。
表示があっても、全部が残っているわけではないんですね。
そうなんです。同じ調査では、バナナ12検体には防かび剤の表示がなく、イマザリルとチアベンダゾールも検出されませんでしたよ。
防カビ剤の落とし方は「洗う・ゆでこぼす・皮をむく」


レモンやグレープフルーツの防カビ剤が気になるとき、どう落とせばよいのでしょうか。東京都の食品安全FAQと、東京都健康安全研究センターの調査で確かめました。
結果、よく水洗いする、ゆでこぼすことで残る量を減らせて、気になる場合は皮をむいて食べるのがすすめられていました。
洗うだけでも、減らせるんですね。
そうなんです。3つの方法を順番に見ていきましょう。
よく水洗いする・ゆでこぼす
東京都の食品安全FAQは、「防かび剤は、主に果皮に残存します」としています。
そのうえで、「よく水洗いしたり、ゆでこぼすことで残存量を減少させることができます」と説明しています。皮ごと使うときは、まず洗うのが基本です。
皮を使う料理のときは、よく洗えばいいんですね。
はい。ゆでこぼすのも、残る量を減らす方法の1つですよ。
気になるなら皮をむく
同じFAQは、「気になる場合は皮をむいて食べましょう」としています。


東京都健康安全研究センターの調査も、イマザリルなどは皮にかたよって残ることが報告されているため、果皮を除去して食べれば、防かび剤の摂取量をかなり抑えられると考えられるとしています。
皮をむけば、かなり減らせるんですね。
そのとおりです。果肉だけ食べるなら、皮をむくのがいちばん手軽ですよ。
洗わず皮ごと食べた場合は
同じ調査では、検出された量から計算した推定一日摂取量は、一日摂取許容量(ADI)に対して0.2〜5.6%でした。
調査は、この結果から「洗浄せず皮ごと食べたとしても安全性に問題はないと考えられる」としています。レモン果汁の扱いについては、ポッカレモンの記事でも紹介しています。
洗い忘れても、すぐに心配しなくていいんですね。
そうなんです。気になる方が、洗う・皮をむくを選べばよいということですよ。
防ばい剤のよくある質問


ここまでの内容をふまえて、防ばい剤について多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
防ばい剤は体に悪いですか
使ってよい果物と、残ってよい量の上限が使用基準で決められている添加物です。東京都は、使用基準を守ったかんきつ類についている防かび剤の量は、健康に影響を及ぼすような量ではないとしています。
防ばい剤と防かび剤はちがいますか
食品表示基準では「防かび剤又は防ばい剤」として1つの用途名にまとめられています。呼び方がちがうだけで、同じ用途の添加物です。
イマザリルはどの果物に使われますか
使用基準で、かんきつ類(みかんを除く)とバナナにしか使えない決まりです。
1日にどのくらいまでなら大丈夫ですか
イマザリルのADIは体重1kgあたり0.025mgとされています。体重50kgの人なら1日1.25mgで、上限いっぱい残ったかんきつ類なら約250g分にあたります。
ばら売りの果物にも表示はありますか
消費者庁の資料では、容器包装に入れないで販売される食品でも、防かび剤または防ばい剤は表示が必要な添加物の1つです。
防かび剤を落とす方法はありますか
東京都の食品安全FAQでは、よく水洗いしたり、ゆでこぼしたりすることで残る量を減らせるとしています。気になる場合は皮をむいて食べるよう勧めています。
防ばい剤とは何かのまとめ


防ばい剤とは何か、イマザリルは危ないのかを、消費者庁の使用基準と表示のルール、食品安全委員会と東京都の資料で確かめてきました。
答えは「防ばい剤は防かび剤と同じ、果物に使う添加物。イマザリルはかんきつ類1kgで5mgまでで、上限いっぱいでも体重50kgのADIはかんきつ類約250g分。ばら売りでも表示が必要で、気になるなら洗うか皮をむく」です。
- 防ばい剤と防かび剤は同じ用途名
- 使える物質は10種類、使える果物も決まっている
- イマザリルはかんきつ類1kgで5mg・バナナ2mgまで
- ADIは体重50kgで1日1.25mg
- 実際の摂取量はADIの20%未満と見積もられている
- ばら売りでも表示が必要、気になるなら皮をむく
上限と表示を知って、気になるときは洗う・皮をむくというのが、今回いちばん大事な点でした。
上限と表示が分かって、選び方が決まりました。
そのとおりです。名前のこわさより、上限と表示を知る。これがいちばん大きなポイントですよ。
次にレモンやバナナを買うときは、売り場やパッケージの「防かび剤」の表示を見てみてください。
成分ラボでは身近な添加物を、国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事の使用基準は消費者庁「食品添加物の使用基準」、表示のルールは食品表示基準と消費者庁「食品表示基準について」、ADIと推定摂取量は食品安全委員会「ハザード概要シート(案)(イマザリル)」、洗い方や皮の扱いは東京都保健医療局「食品安全FAQ」、流通品の調査結果は東京都健康安全研究センター年報 第72号(2021)によります(2026年10月23日確認)。体重ごとの量とかんきつ類の量は、これらの値から計算しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。






