【検証】マーガリンは日本だけ規制なし?EUの上限で測っても市販60点は範囲内

マーガリンは日本だけ規制なし?海外で規制されたのはトランス脂肪酸、とトーストとマーガリンを前にしたナナとセイジのアイキャッチ

トーストに塗ったり、お菓子づくりに使ったりと、家庭でおなじみのマーガリン。手ごろな値段で、冷蔵庫から出してすぐ塗れる便利さもあります。

一方で、「マーガリンは海外では禁止されているのに、日本だけ規制がない」「マーガリンはプラスチックと同じ」という話を耳にして、食べ続けてよいのか迷っている方もいるはずです。

マーガリンは日本だけ規制なしの疑問に答えます
  • 海外ではマーガリンが禁止されているのか知りたい
  • 日本に規制がない理由を知りたい
  • 今のマーガリンのトランス脂肪酸はどのくらいか知りたい
  • 「プラスチックと同じ」は本当か確かめたい

そこで、農林水産省がまとめた各国の規制状況と、市販品の調査結果、マーガリン類の日本農林規格(JAS)をつき合わせて調べています。

結果、海外で規制されているのはトランス脂肪酸や部分水素添加油脂で、マーガリンそのものではありません。市販のマーガリン60点をEUの上限で測っても、すべて範囲内という計算になりました。

海外では、マーガリンが売られていないと思っていました……。

そう聞くと心配になりますよね。国の資料で、順番に確かめていきましょう。

この記事で確かめること
  • 海外の規制は何を対象にしているのか
  • 日本に規制がない理由
  • 市販のマーガリンをEUの上限で測った結果
  • マーガリンは何からできているのか

使う数字は、国の資料に限りました。まずは、「日本だけ規制なし」と言われる理由から見ていきます。

目次

マーガリンは日本だけ規制なしと言われる理由

マーガリンは日本だけ規制なし?3つの理由を確かめる、と不安そうなナナのバナー

「マーガリンは日本だけ規制なし」と言われるのはなぜでしょうか。

理由をたどると、3つに分かれました。海外で規制が増えたこと、日本には表示の義務も基準値もないこと、「プラスチックと同じ」という話です。

どれも、聞いたことがある話です。

1つずつ、資料で確かめていきますね。

海外で規制が増えた

農林水産省の各国・地域の規制状況によると、トランス脂肪酸の規制を導入した国は、2015年の7か国から、2024年10月時点で60か国に増えたとWHOが報告しています。

ただし、規制の対象はトランス脂肪酸や、それができることがある油脂です。「マーガリンを禁止した」という規制ではありません。

60か国と聞くと、ずいぶん多いですね。

はい。ただ、何を規制しているかが大事なんです。2章でくわしく見ますよ。

日本には表示の義務も基準値もない

農林水産省の「すぐにわかるトランス脂肪酸」には、日本では、食品中のトランス脂肪酸について、表示の義務や濃度に関する基準値はありませんと書かれています。

海外で規制が増える中、日本には決まりがないため、「日本だけ取り残されている」と感じる方もいるはずです。理由は3章で確かめます。

日本に決まりがないのは、本当なんですね。

そうなんです。ただ、決まりがないのには理由があるんですよ。

「プラスチックと同じ」という話

ネットでは、「マーガリンはプラスチックと同じ」という話も見かけます。どこから広まった話なのかは、国の資料では確かめられませんでした。

マーガリンは日本だけ規制なしと言われる3つの理由と、調べた事実の図

マーガリンが何からできているかは、日本農林規格(JAS)の定義で確かめられるので、5章で見ていきましょう。

プラスチックと聞くと、さすがに食べる気がしません……。

その気持ちは分かります。国の規格で、原料を確かめてみましょう。

海外で規制されているのは、マーガリンではなくトランス脂肪酸

海外で禁止?規制はトランス脂肪酸、と地球儀を前に説明するセイジのバナー

海外では、本当にマーガリンが禁止されているのでしょうか。農林水産省の各国・地域の規制状況で確かめました。

規制は、食品中のトランス脂肪酸の上限値、部分水素添加油脂の使用規制、トランス脂肪酸の表示義務の3つの型に分かれていました。どれも、マーガリンそのものを禁止するものではありません。

マーガリンが禁止されたわけではないんですね。

そうなんです。代表的な国の中身を見ていきましょう。

アメリカは部分水素添加油脂の使用を禁止

アメリカの規制では、2015年6月に部分水素添加油脂の食品への使用規制を公表し、2021年1月からはすべての食品で使用が禁止されました。

農林水産省は、「トランス脂肪酸の食品への添加が禁止された」という報道について、規制の対象は部分水素添加油脂で、トランス脂肪酸そのものを食品に加えているわけではないと注意を添えています。

禁止されたのは、マーガリンではなく油脂の種類なんですね。

はい。部分水素添加油脂を使わずに作ったマーガリンは、規制の対象外ですよ。

EUは脂質100gあたり2gまで

EUの規制では、2021年4月2日から、消費者向けの食品中のトランス脂肪(天然由来のものを除く)は、脂質100gあたり2gを超えてはならないとされています。

海外のトランス脂肪酸の規制を上限値・使用規制・表示義務の3つに分けた図

デンマークは、それより早い2003年6月から、油脂100gあたり2gまでという規則を設けています。4章では、このEUの上限を物差しにして、日本のマーガリンを測ってみましょう。

上限を守れば、マーガリンも売れるということですね。

そのとおりです。量に上限をつける規制なんですよ。

トランス脂肪酸を完全に禁止した国はない

農林水産省は、食品へのトランス脂肪酸の含有を完全に禁止している国や地域はなく、多くの場合、天然由来のトランス脂肪酸については規制していないとしています。

牛肉や牛乳、乳製品には、天然のトランス脂肪酸が微量に含まれています。完全に禁止すると、こうした食品まで売れなくなってしまいます。

牛乳にも入っているとは知りませんでした。

牛などの胃の中の微生物の働きでできるんです。だから、規制は加工でできる分が中心なんですよ。

日本に規制がないのは、摂取量が少ないから

日本人のトランス脂肪酸の摂取量はWHO目標の半分以下、と和食を前にしたナナとセイジのバナー

では、日本に規制がないのはなぜでしょうか。農林水産省の「すぐにわかるトランス脂肪酸」で確かめました。

答えは、日本人のトランス脂肪酸の摂取量が、WHOの目標を下回っているからでした。

日本人は、もともと少ないんですね。

はい。数字で見ていきましょう。

WHOの目標は総エネルギーの1%未満

WHO/FAOの専門家会合は2003年に、トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくするよう勧告しています。

日本人が1日にとるエネルギー量の平均は約1,900kcalで、その1%に当たるトランス脂肪酸は約2gです。

1日2gが、1つの目安なんですね。

そうなんです。この数字を覚えておくと、あとの比較が分かりやすくなりますよ。

日本人の摂取量は0.3〜0.47%

農林水産省の2005〜2007年度の調査研究では、日本人の平均的な摂取量は1日0.92〜0.96g、総エネルギーの0.44〜0.47%と推定されました。

日本人のトランス脂肪酸の摂取量とWHOの目標を比べた棒グラフ

食品安全委員会は2012年3月の評価で、平均的な摂取量を総エネルギーの約0.3%と推定しています。どちらも、WHOの目標の1%を下回っています。

目標の半分にも届いていないんですね。

はい。摂取量が少ない国では、事業者に自主的な低減を求める例もあるんですよ。

食品安全委員会は「影響は小さい」

食品安全委員会は、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論しました。

一方で、脂質の多い食事をしている人は、トランス脂肪酸を多くとる可能性があるとも指摘されています。安心しきらず、脂質のとりすぎには気をつけたいところです。

偏った食事だと、話は別なんですね。

そのとおりです。平均の話と、自分の食事の話は分けて考えましょう。

市販のマーガリンをEUの上限で測ると、60点すべて範囲内

市販のマーガリンをEUの上限で測ると60点すべて範囲内、と笑顔のナナのバナー

では、今の日本のマーガリンは、規制のあるEUの基準で測るとどうなるのでしょうか。農林水産省の令和4・5年度の調査結果を使って計算しました。

結果、調べた60点はどれも、EUの上限「脂質100gあたり2g」を下回る計算になりました。

規制のある国の物差しでも、大丈夫だったんですね。

はい。計算の中身を、順番に見ていきましょう。

農林水産省が60点を調べた

項目中央値範囲
脂質(食品100gあたり)82g81〜86g
トランス脂肪酸(食品100gあたり)0.65g0.33〜1.3g
飽和脂肪酸(食品100gあたり)30g17〜45g
出典:農林水産省「令和4・5年度調査結果」(マーガリン60点)

農林水産省は、平成18・19年度や平成26・27年度の調査と比べて、トランス脂肪酸が全体的に減少傾向にあることを確認しています。

昔より、減ってきているんですね。

はい。作り方の工夫は、5章でくわしく見ますね。

脂質100gあたりに直すと約0.79g

EUの上限は「脂質100gあたり」なので、食品100gあたりの数字を直します。中央値で計算すると、0.65g÷82g×100=約0.79gです。

市販のマーガリンのトランス脂肪酸をEUの上限と比べた棒グラフ

これは、EUの上限2gの半分以下です。トーストに塗る量を10gとすると、トランス脂肪酸は約0.07gで、1日の目安の約2gと比べてわずかな量になります。

10gで0.07gなら、ほんの少しですね。

そうなんです。ただ、脂質そのものは10gで約8gあるので、塗りすぎには気をつけましょう。

多く見積もっても約1.6g

60点のうち、トランス脂肪酸がいちばん多いもの(1.3g)と、脂質がいちばん少ないもの(81g)を組み合わせて、わざと多めに見積もっても約1.6gでした。

しかも、この数字は天然由来の分も含めた値です。天然由来の分を除くEUの数え方より厳しめの計算でも、上限の2gを下回るということです。

いちばん厳しく計算しても、範囲内なんですね。

はい。ただ、調べたのは「マーガリン」の60点で、ファットスプレッドなどは別の数字なので注意してくださいね。

マーガリンは食用油脂から作る食品で、プラスチックではない

マーガリンはプラスチックと同じ?原料は食用油脂、と油の瓶を前に微笑むセイジのバナー

では、「マーガリンはプラスチックと同じ」という話はどうでしょうか。マーガリン類の日本農林規格(JAS 0932:2024)の定義で確かめました。

定義では、マーガリンは食用油脂に水などを加えて作る食品です。プラスチックの名前は、どこにも出てきません。

国の規格で、作り方まで決まっているんですね。

はい。定義を順番に見ていきましょう。

JASの定義は「食用油脂に水などを加えて乳化」

JASでは、マーガリンを「食用油脂に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないでつくられた可塑性のもの又は流動状のもの」と定めています。

原料は食用油脂です。乳化とは、油と水を混ざった状態にすることを指します。

油と水を混ぜて、冷やして練るんですね。

そうなんです。原料をたどると、食用の油と水なんですよ。

油脂80%以上がマーガリン

JASでは、油脂含有率が80%以上のものを「マーガリン」、80%未満のものを「ファットスプレッド」と分けています。

マーガリンとファットスプレッドの規格のちがいを示す図

見た目が似ていても、油脂の割合で呼び名が変わるということです。この記事の4章の数字は、「マーガリン」60点のものです。

同じように見えても、名前が違うんですね。

はい。油脂の割合が違えば、脂質の量も変わってきますよ。

トランス脂肪酸は作り方を変えて減らしてきた

油を固める方法の1つに「水素添加」があり、部分的に水素添加した油脂を使うと、トランス脂肪酸ができることがあります。

農林水産省の資料によると、食品製造事業者はエステル交換や分別などの加工技術を選ぶことで、トランス脂肪酸の濃度が低いマーガリンやショートニングを開発しています。マーガリンの成分については、ネオソフトの記事でも紹介しています。

作り方を工夫して、減らしてきたんですね。

そのとおりです。4章で見た減少傾向も、こうした取り組みが進むなかで確かめられたものですよ。

マーガリンは日本だけ規制なしのよくある質問

マーガリンの6つの疑問に答えます、と吹き出しに囲まれて考えるナナのバナー

ここまでの内容をふまえて、マーガリンと海外の規制について多い疑問にまとめて答えます。

気になる質問だけ拾い読みしてください。

マーガリンは海外で禁止されていますか

海外で規制されているのは、食品中のトランス脂肪酸の濃度や、部分水素添加油脂の使用などです。農林水産省は、食品へのトランス脂肪酸の含有を完全に禁止している国や地域はないとしています。

アメリカではいつから規制されていますか

アメリカは2015年6月に部分水素添加油脂の食品への使用規制を公表し、2021年1月からはすべての食品で使用が禁止されました。

日本にトランス脂肪酸の規制がないのはなぜですか

日本人の平均的な摂取量は総エネルギーの約0.3〜0.47%と推定され、WHOの目標の1%未満を下回っています。食品安全委員会は、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられると結論しています。

日本のマーガリンのトランス脂肪酸はどのくらいですか

農林水産省の令和4・5年度の調査では、マーガリン60点の中央値は食品100gあたり0.65g(範囲0.33〜1.3g)でした。脂質100gあたりに直すと約0.79gで、EUの上限2gを下回ります。

マーガリンはプラスチックと同じですか

マーガリン類の日本農林規格では、マーガリンは食用油脂に水などを加えて乳化して作る、油脂含有率80%以上のものと定められています。原料は食用油脂です。

マーガリンとファットスプレッドはどうちがいますか

日本農林規格では、油脂含有率が80%以上のものをマーガリン、80%未満のものをファットスプレッドとしています。

マーガリンは日本だけ規制なしのまとめ

マーガリンは規制より量を見る、脂質と塩分も控えめに、と微笑むセイジとナナのバナー

マーガリンは日本だけ規制がないのかを、農林水産省がまとめた各国の規制状況と市販品の調査結果、日本農林規格で確かめてきました。

答えは「海外で規制されているのはトランス脂肪酸や部分水素添加油脂で、マーガリンそのものではない。日本に規制がないのは摂取量が少ないからで、市販のマーガリン60点はEUの上限で測っても範囲内」です。

この記事のポイント
  • 海外の規制はトランス脂肪酸の上限・油脂の使用規制・表示義務
  • トランス脂肪酸を完全に禁止した国や地域はない
  • 日本人の摂取量は総エネルギーの約0.3〜0.47%で、WHOの目標1%未満
  • 市販のマーガリン60点は脂質100gあたり中央値約0.79g
  • 多く見積もっても約1.6gで、EUの上限2gを下回る
  • マーガリンは食用油脂に水などを加えて作る、油脂80%以上の食品

「日本だけ規制なし」でも、今のマーガリンは規制のある国の物差しで範囲内というのが、今回いちばん大事な点でした。

海外で禁止されていると思っていたので、すっきりしました。

そのとおりです。トランス脂肪酸だけでなく、脂質や塩分のとりすぎにも目を向ける。これがいちばん大きなポイントですよ。

次にマーガリンを使うときは、塗る量と、ほかの食事の脂質もあわせて見てみてください。

トランス脂肪酸の心配はクリームにもあります。植物性生クリームは体に悪い?の記事もどうぞ。農林水産省の調査では、植物油脂を含むクリーム14点の中央値が100gあたり0.30gでした。

成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。

数値についての注記

本記事の各国の規制は農林水産省「トランス脂肪酸に関する各国・地域の規制状況」(2025年10月1日更新)と同省のEU・米国・デンマークのページ、日本人の摂取量と食品安全委員会の結論は農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」(2025年5月13日更新)、マーガリンの数値は農林水産省「令和4・5年度調査結果」、マーガリンの定義はマーガリン類の日本農林規格(JAS 0932:2024)によります(2026年10月24日確認)。脂質100gあたりの値と10gあたりの値は、調査の中央値と範囲から成分ラボが計算したものです。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。

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