コンビニのおにぎりやお弁当、かまぼこの原材料欄で見かける「グリシン」。睡眠サプリの成分としても知られるアミノ酸です。
一方で、「グリシンはやばい」「発がん性がある」という話を耳にして、グリシン入りの食品を避けている方もいるかもしれません。
- やばい添加物なのか知りたい
- 発がん性があるのか不安
- おにぎりやお弁当を避けるべきか迷う
- サプリで飲んでも大丈夫か知りたい
そこで、文部科学省の食品成分表と食品安全委員会の評価書、国際機関の評価をもとに、ふだんの食べ物にどれくらいグリシンが入っているかを確かめました。
結果、添加物のグリシンを避けても、くるまえび100gで2,600mg、睡眠サプリ1本の約9割を食べていることが分かりました。
添加物を避ければ、グリシンはとらないと思っていました……。
グリシンは、えびやほたて、肉や魚にもともと多いアミノ酸なんです。数字で順番に確かめていきましょう。
- グリシンの正体と表示のきまり
- 身近な食品に入っている量
- サプリ1本との比較
- 発がん性の噂のもとと評価
使う数字は、メーカーの公式情報と国・国際機関の資料に限りました。まずは、なぜやばいと言われるのかから見ていきます。
グリシンがやばいと言われる理由


グリシンは、たんぱく質を作るアミノ酸の1つです。食品添加物としては、味付けや日持ちのために、おにぎりやお弁当、練り製品などに使われています。食品のほかに、粉末のサプリメントとして売られているものもあります。
「やばい」と言われる理由をたどると、3つに分かれました。添加物だから、発がん性の話、そしてサプリでたくさん飲むことです。
おにぎりに入っているのは、よく見かけます。
身近だからこそ、気になりますよね。1つずつ見ていきましょう。
添加物だから心配
原材料欄の「/」の後ろにグリシンと書かれていると、それだけで避けたくなる人もいるでしょう。
ただ、グリシンはえびやほたて、肉や魚にもともと多く含まれるアミノ酸です。どれくらい入っているかを、3章で確かめます。
食べ物にも入っているんですね。
そうなんです。量で比べると、見え方が変わりますよ。
発がん性の話がある
「グリシンには発がん性がある」という話もあります。調べると、ラットに大量に与えた長期試験で、腎臓に腫瘍が見られたという記録が、食品安全委員会の評価書に載っていました。
ただし、その量は体重60kgの人なら1日75gにあたるほどの大量です。くわしくは5章で見ます。
75gは、すごい量ですね。
ふつうの食事とはけた違いの量なんですよ。
サプリでたくさん飲む
グリシンは睡眠をサポートするサプリにも使われていて、1本に3,000mg入っている商品もあります。
「サプリで毎日飲んで大丈夫?」という声もありますが、えび100gでほぼ同じ量をとっていることも、4章で比べます。
サプリとえびが、同じくらいなんですか。
驚きますよね。数字で確かめてみましょう。
グリシンとは何か


ここからは、国の指定添加物リストと消費者庁の通知で、グリシンの扱いを見ていきます。
結果、国が使用を認めた「指定添加物」で、味付けに使うと「調味料(アミノ酸等)」とまとめて書けることが分かりました。


まとめて書けるなら、気づかないこともありそうです。
そうなんです。表示のきまりを知っておくと、見え方が変わりますよ。
たんぱく質を作るアミノ酸
グリシンは、たんぱく質を作るアミノ酸の1つで、体の中でも作られます。食べ物のたんぱく質を食べれば、自然にとっている成分です。
食品添加物としてのグリシンは、国の指定添加物リストに載っている物質です。国が安全性を確かめて、使ってよいと決めた添加物にあたります。
体の中でも作られるんですね。
そうなんです。体にとってなじみのある成分なんですよ。
表示には出ないこともある
| 使う目的 | 原材料欄での書かれ方 |
|---|---|
| 味付け(調味料) | 調味料(アミノ酸等)とまとめて書ける |
| それ以外の目的 | グリシン |
| 栄養を足す目的 | 表示しなくてよい |
消費者庁の通知では、グリシンを調味料として使うときは「調味料(アミノ酸等)」とまとめて書いてよいとされています。また、栄養を足す目的なら表示しなくてよい添加物にも入っています。
つまり、「グリシン」と書かれていなくても、使われていることがあるのです。表示で完全に避けるのは、むずかしいと言えます。
参考記事との違い
参考にした記事では、「一度に3g以上とるとおなかがゆるくなる」「甘い味に慣れて甘味依存になる」と書かれていましたが、どちらも出典は示されていませんでした。
また、「食品安全委員会が人の健康を損なうおそれのない物質として扱っている」とありましたが、この評価は動物の薬やえさに使ったグリシンが食品に残る場合についてのものです。この記事では、評価が何についてのものかを分けて書きます。
同じ「安全」でも、何についての話かが大事なんですね。
そうなんです。評価の対象まで確かめると、正確に読めますよ。
身近な食品に入っているグリシンの量


次は、ふだんの食べ物にグリシンがどれくらい入っているかです。文部科学省の食品成分表(アミノ酸成分表編)には、食品100gあたりのグリシンの量が載っています。
結果、くるまえび100gで2,600mg、ほたて貝柱100gで2,000mgと、魚介類にとくに多く入っていました。


えびとほたてが、とくに多いんですね。
うま味や甘みを感じる魚介類に多いんですよ。
えびとほたてに多い
| 食品(100gあたり) | グリシン |
|---|---|
| くるまえび(養殖・生) | 2,600mg |
| ほたて貝柱(生) | 2,000mg |
| しろさけ(生) | 1,200mg |
| ぶたロース赤肉(生) | 1,100mg |
| 糸引き納豆 | 690mg |
| ごはん(精白米) | 110mg |
魚介類や肉、納豆など、たんぱく質の多い食品にはグリシンが入っています。グリシンを避けるには、たんぱく質の多い食品を全部避けることになってしまうのです。
ゼラチンには4分の1
食品成分表で、とくに多かったのがゼラチンです。100gあたり24,000mgで、重さの4分の1近くがグリシンでした。
ゼリーやグミを固めるゼラチン5gには、約1,200mgのグリシンが入っている計算になります。ゼラチンは、もともとグリシンが多いたんぱく質なのです。
ゼリーにも、グリシンが入っているんですね。
そうなんです。添加物と書かれていなくても入っているんですよ。
練り製品はえびより少ない
添加物として使われることがある練り製品は、かまぼこ(蒸し)100gで460mg、魚肉ソーセージ100gで600mgでした。
成分表の値なので添加物の分がふくまれるかは商品によりますが、くるまえびやほたてよりずっと少ないことが分かります。添加物のグリシンだけを特別こわがる理由は見当たりません。
練り製品のほうが少ないなんて、意外でした。
もとの魚介類にも入っているので、量で比べることが大切なんですよ。
添加物を避けてもえびでサプリ1本分


グリシンを含む睡眠サプリには、味の素の「グリナ」のように、1本に3,000mg入っている商品があります。そこで、身近な食品と量を並べました。
結果、くるまえび100gで2,600mgと、サプリ1本の約9割でした。


えびを食べるだけで、サプリに近い量なんですね。
そうなんです。表で確かめてみましょう。
えび100gでサプリの約9割
| グリシンの量 | グリシン | サプリ1本との比較 |
|---|---|---|
| 睡眠サプリ「グリナ」1本 | 3,000mg | ― |
| くるまえび100g | 2,600mg | 約9割 |
| ほたて貝柱100g | 2,000mg | 約3分の2 |
| ゼラチン5g | 約1,200mg | 約4割 |
添加物のグリシンを避けても、えびやほたてを食べればサプリに近い量をとっています。「グリシンをとらない」ことは、ふつうの食事ではできないと言えます。
サプリは何のために飲む?
味の素の発表では、グリナはグリシンを3,000mg配合した機能性表示食品で、睡眠の質の向上をうたう商品です。発表には、グリシンは「ホタテなどの魚介類に多く含まれる」という説明もありました。
サプリは、食事からとる量とほぼ同じけたの量を、寝る前などに決まった時間にとるためのものです。飲むときは、商品に書かれた1日の目安量を守りましょう。
食事でとれる量と、そんなに変わらないんですね。
そうなんです。だからといって何本も飲むのは別の話なので、目安量は守ってくださいね。
避けるより全体の量を見る
おにぎりやお弁当のグリシンが気になる場合、添加物の量は表示されていないので、正確に比べることはできません。
ただ、たんぱく質の多い食品にはもともと入っているので、グリシンだけを避けるより、食事全体のバランスを見るほうが大切です。調味料のアミノ酸については、ハイミーの記事も参考にしてください。
名前だけで避けなくてもよさそうですね。
そのとおりです。量で考えるのがいちばんですよ。
グリシンの発がん性と安全性


最後に、いちばん気になる発がん性を確かめます。食品安全委員会の評価書(2012年)には、動物試験の結果と国際機関の評価がまとめられています。
結果、ラットに大量に与えた試験で腎臓に変化はあったものの、国際機関は今の摂取量で安全性の懸念はないとしていることが分かりました。


腎臓に変化があったというのは、気になります。
量がポイントなんです。順番に見ていきましょう。
ラットの試験は1日75g相当
評価書によると、ラットにグリシンを体重1kgあたり1日1,250mgと2,500mg、108週間飲み水で与えた試験で、腎臓の一部の壊死と、メスの6〜8%に腎臓の腫瘍(腎盂乳頭腫)が見られました。
1,250mgは、体重60kgの人なら1日75gにあたります。サプリ1本(3g)の25倍、えび100gの約29倍の量を、毎日2年近く続けた場合の結果です。
毎日75gは、さすがにとらないですね。
そうなんです。ふつうの食事やサプリの量とは、けた違いなんですよ。
国際機関は懸念なし
FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は2004年に、グリシンを香料として使う場合について、今の摂取量では安全性の懸念はないと結論づけました。ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)も同じ結論です。
どちらも、グリシンは食品のたんぱく質から大量にとっているため、香料として加わる量は比べものにならないほど少ないという考え方です。添加物の評価の読み方は、トレハロースの記事でも紹介しています。
食事からとる量のほうが、ずっと多いんですね。
そうなんです。それが、懸念なしの理由なんですよ。
遺伝毒性は陰性
評価書では、細菌を使った遺伝毒性の試験はすべて陰性でした。人の細胞を使った試験で陽性が出たものもありましたが、EFSAは結論づけられないとしています。
食品安全委員会は、体の中で使われて蓄積しないことなどから、えさや動物の薬に使われたグリシンが食品に残っても、人の健康を損なうおそれはないと評価しました。ほかの添加物の安全性は、キサンタンガムの記事にもまとめました。
体にたまらないなら、少し安心です。
アミノ酸なので、体の中で使われていくんですよ。
グリシンのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、グリシンについて多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
グリシンはやばい添加物ですか
国が使用を認めた指定添加物です。たんぱく質を作るアミノ酸の1つで、くるまえび100gに2,600mg、ほたて貝柱100gに2,000mgと、ふだんの食べ物にも多く入っているアミノ酸です。
国際機関は、香料として使う場合、今の摂取量では安全性の懸念はないとしています。
グリシンに発がん性はありますか
ラットに体重1kgあたり1日1,250mg以上を108週間与えた試験で、メスの一部に腎臓の腫瘍が見られた記録があります。
この量は体重60kgの人なら1日75gにあたり、ふつうの食事やサプリ1本(3g)とはけた違いの量です。
おにぎりやお弁当のグリシンは避けたほうがいいですか
添加物の量は表示されていないため、正確には比べられません。ただ、たんぱく質の多い食品にはもともと入っていて、えび100gでサプリ1本の約9割をとっています。
グリシンだけを避けるより、食事全体のバランスを見るほうが大切です。
原材料に「グリシン」と書いていなければ入っていませんか
いいえ。調味料として使う場合は「調味料(アミノ酸等)」とまとめて書けるため、名前が出ないことがあります。
栄養を足す目的なら、表示しなくてよいことにもなっています。
グリシンのサプリを飲んでも大丈夫ですか
味の素の「グリナ」は1本に3,000mgのグリシンを配合した機能性表示食品で、くるまえび100g(2,600mg)とほぼ同じけたの量です。
商品に書かれた1日の目安量を守り、治療中の方は医師に相談してください。
ゼリーやグミにもグリシンは入っていますか
ゼラチンには100gあたり24,000mgのグリシンが入っていて、ゼラチン5gで約1,200mgになります。
ゼラチンを使ったゼリーやグミには、添加物と書かれていなくてもグリシンが入っていることになります。
グリシンはやばいかのまとめ


グリシンはやばいのかを、文部科学省の食品成分表と食品安全委員会の評価書、国際機関の評価で確かめてきました。
答えは「やばい添加物ではない。えびやほたて、肉や魚から毎日とっているアミノ酸で、発がん性の話はけた違いの量の動物試験」です。
- たんぱく質を作るアミノ酸の1つ
- 国が認めた指定添加物
- 味付けに使うと名前が出ないことも
- くるまえび100gで2,600mg
- えび100gでサプリ1本の約9割
- ラット試験の量は体重60kgで1日75g
添加物のグリシンを避けても、くるまえび100gで2,600mg、睡眠サプリ1本の約9割を食べているというのが、今回いちばんの発見でした。
名前だけで、こわがらなくてよさそうです。
そのとおりです。名前より量を見る。これがいちばん大事なポイントですよ。
次にグリシン入りの食品を見かけたら、ふだん食べているえびや魚の量と比べてみてください。
ほかの添加物では、ミョウバンの記事もあります。2018年の基準改正で、子どもが加工食品からとるアルミニウムは1日1.80mgから0.50mgへ、約4分の1に減りました。




コンビニ弁当の日持ちについては、コンビニ弁当の消費期限の記事もあわせてどうぞ。大手3社とも保存料を使わない商品を公表していて、消費期限は試験で決めて安全係数をかけて設定します。
成分ラボでは身近な食品を、メーカーの表示と国や国際機関の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの添加物の記事も、あわせてどうぞ。






本記事の食品のグリシン量は、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 アミノ酸成分表編」第1表(可食部100g当たり)の値です。添加物としての分類は指定添加物リスト(規則別表第1)、表示のきまりは消費者庁「食品表示基準について」で確かめました。安全性の評価は、食品安全委員会「対象外物質評価書 グリシン」(2012年)と、そこに引用されたJECFA(2004年)・EFSAの評価によります。サプリのグリシン量は、味の素株式会社のニュースリリース(2020年6月30日)を使いました(2026年10月13日確認)。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。腎臓の病気などで食事の制限がある方や治療中の方は、医師の指示を優先してください。








