お菓子や飲み物、アイスの原材料表示で、よく見かける「香料」。いちごの香りやバニラの甘い香りなど、食べ物のおいしさを引き立ててくれる存在です。
一方で、「香料は中身が分からないから怖い」「合成香料は体に悪い」という話を耳にして、香料入りの食品を避けたほうがいいのか迷っている方もいるはずです。
- 香料が体に悪いと言われる理由を知りたい
- 香料にはどんな種類があるのか知りたい
- 国は香料の安全性をどう評価しているのか知りたい
- 原材料表示の「香料」の見方を知りたい
そこで、消費者庁の表示のルールと、食品安全委員会の香料の評価指針・評価書をつき合わせて調べています。
結果、国は香料ごとに「推定摂取量」が「摂取許容値」を下回るかで安全性を評価していて、香ばしい香りの成分の例では、推定摂取量は許容値の100分の1以下でした。しかもその成分は、食品にもともと含まれる量のほうが、香料として加えた量の約800倍と報告されていました。
香料って、食べ物にもともとある成分なんですね。
そうなんです。ただ、すべての香料に当てはまるわけではないので、順番に確かめていきましょう。
- 「香料」と表示されるものの範囲
- 国が香料の安全性を評価するしくみ
- 香ばしい香りの成分の具体例
- 原材料表示での香料の見方
使う数字や言葉は、国の資料に限りました。まずは、香料が体に悪いと言われる理由から見ていきます。
香料が体に悪いと言われる理由


香料が「体に悪い」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、3つに分かれました。中身が分からないこと、合成香料があること、種類がとても多いことです。
どれも、なんとなく気になっていたことです。
1つずつ、資料で確かめていきますね。
中身が分からない
原材料表示では、香料は「香料」という一括名で書くことができます。一括名とは、使った物質の名前の代わりに、目的の名前でまとめて書ける表示のしかたです。
そのため、どの成分を使ったのかは、ラベルからは分からないことになります。同じしくみの表示は、pH調整剤の記事でも紹介しています。
中身が見えないと、不安になりますね。
そうですよね。4章で、表示の見え方をまとめます。
合成香料がある
香料には、化学的に作られた合成香料があります。「合成」と聞くと、体に悪そうだと感じる方もいるはずです。
合成香料は、国が食品添加物として指定したものだけが使えます。2章で、合成香料と天然香料のちがいを見ていきましょう。
合成という言葉だけで、身構えてしまいます。
その気持ちは分かります。国がどう決めているかを知ると、見え方が変わりますよ。
種類がとても多い
消費者庁の「食品添加物に関する規制の概要」によると、天然香料だけで約600品目あります。


種類が多いと、1つずつ安全性を確かめているのか気になるところです。評価のしくみは、3章でくわしく見ます。
600品目もあると、全部は覚えられません。
はい。だからこそ、評価のしかたを知っておくのが近道なんですよ。
「香料」と表示されるのは、合成香料と天然香料の両方


原材料表示の「香料」には、何が含まれているのでしょうか。消費者庁の「食品表示基準について」で、一括名「香料」の範囲を確かめました。
範囲には、合成香料として指定された添加物と、天然香料の両方が入っていました。
合成も天然も、同じ「香料」なんですね。
はい。それぞれの中身を見ていきましょう。
香料の定義
「食品表示基準について」では、香料を「食品の製造又は加工の工程で,香気を付与又は増強するため添加される添加物及びその製剤」と定義しています。
つまり香料は、食べ物に香りをつけたり、強めたりするための添加物です。
香りをつけるためのものなんですね。
そのとおりです。味ではなく、香りを担当しているんですよ。
合成香料は指定添加物
合成香料は、国が「指定添加物」として認めたものです。個別に名前がある品目のほか、「エステル類」「ケトン類」のように、類や誘導体として指定されている18項目もあります。
指定添加物は、食品安全委員会の評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って使用が認められるしくみです。
国が1つ1つ確かめて、認めているんですね。
はい。合成香料の評価のしかたは、3章でくわしく見ますよ。
天然香料は約600品目
天然香料は、動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるものです。例は、バニラ香料やカニ香料です。


天然香料は約600品目で、指定制度の対象外とされています。どちらも、原材料表示では「香料」とまとめて書けます。
天然香料は、指定のしくみとは別なんですね。
そうなんです。国の資料では、指定制度の対象外と書かれていますよ。
国は香料の安全性を「摂取許容値」と比べて評価


では、香料の安全性はどう評価されているのでしょうか。食品安全委員会の「香料に関する食品健康影響評価指針」で確かめました。
香料は、構造の特徴でクラス分けし、クラスごとの「摂取許容値」と、推定摂取量を比べて評価します。
ほかの添加物とは、評価のしかたがちがうんですね。
はい。香料はとても少ない量しか使わないので、それに合ったやり方なんです。
構造でクラスⅠ〜Ⅲに分ける
評価ではまず、香料を構造や体の中での分解のされ方から、クラスⅠ・Ⅱ・Ⅲに分類します。
クラスⅢは、容易に安全と推定できない構造や、毒性を示唆する可能性のある構造を持つもので、いちばん慎重に扱われます。
構造によって、注意の度合いが変わるんですね。
そうなんです。安全と言いにくいものほど、許容値が低く設定されていますよ。
クラスごとの摂取許容値
摂取許容値は、クラスⅠで1人1日1,800μg、クラスⅡで540μg、クラスⅢで90μgです。


この値は、約600の化学物質の約3,000種の毒性データをもとに、体重60kg、安全係数100で求めたものとされています。1μgは、1gの100万分の1です。
とても小さい単位なんですね。
はい。香料は、それだけ少ない量で香りが出るということですよ。
下回れば「安全性に懸念がない」
評価では、遺伝毒性がないかを確かめたうえで、推定摂取量が摂取許容値を下回った場合、安全性に懸念はないと判断します。
上回った場合は、動物試験の結果と比べて、十分な余裕があるかを確かめることになっています。下回るかどうかだけで終わりではありません。
上回ったら、さらにくわしく調べるんですね。
そのとおりです。段階を踏んで確かめるしくみなんですよ。
例:香ばしい香りの成分は、食品にもともと約800倍


では、実際の香料はどう評価されたのでしょうか。食品安全委員会の「添加物評価書 2-エチル-5-メチルピラジン」(2009年)を例に見てみます。
この香料の推定摂取量は1人1日0.8〜4.7μgで、クラスⅡの摂取許容値540μgの100分の1以下でした。
名前は難しいですが、量はとても少ないんですね。
はい。どんな香りの成分かも、あわせて見ておきましょう。
ローストナッツのような香り
評価書によると、この成分はローストナッツ様の加熱香気を持ちます。緑茶やポテトチップなどの食品中にあり、豚肉の加熱調理や、コーヒー・ピーナッツ・カカオの焙煎でもできる成分です。
欧米では、焼き菓子やキャンディー、清涼飲料、肉製品などで、香りの再現や風味の向上のために加えられているとされています。
コーヒーやピーナッツを焼いたときにできるんですね。
そうなんです。いつもの食べ物の中に、もともとある香りなんですよ。
推定摂取量は許容値の100分の1以下
評価書では、推定摂取量(0.8〜4.7μg/人/日)がクラスⅡの摂取許容値(540μg/人/日)を下回ることを確認しています。540÷4.7で計算すると、多めに見積もっても約115倍の余裕があります。


結論は、「食品の着香の目的で使用する場合、安全性に懸念がないと考えられる」でした。動物試験の結果と比べた安全マージンも、20万〜90万とされています。
余裕が100倍以上もあるんですね。
はい。香料として使う量は、それだけ少ないということですよ。
食品にもともと約800倍
評価書には、米国では、食品中にもともと存在する成分としての摂取量が、意図的に加えた量の約800倍と報告されているとも書かれていました。
つまり、香料を避けても、同じ成分はコーヒーやナッツなどの食べ物から多くとっていることがあるということです。香料という名前だけで避けても、成分そのものを避けられるとは限りません。
避けても、普段の食事でとっているんですね。
そうなんです。ただ、これは1つの成分の例なので、すべての香料に当てはまるわけではありませんよ。
原材料表示での香料の見方


では、ラベルではどう見ればよいのでしょうか。「食品表示基準について」の表示のルールから整理しました。
ポイントは、「香料」とだけ書かれていると、どの成分か、合成か天然かは分からないことです。
ラベルだけでは、細かいことは分からないんですね。
はい。分かることと分からないことを、整理しておきましょう。
「香料」とだけ書ける
香料は一括名で書けるので、何種類の香料を使っても「香料」の1語で表示できます。
一括名で書けるしくみは、光沢剤の記事で紹介した「光沢剤」とも共通です。名前が1つでも、中身は複数のことがあると覚えておきましょう。
1語でまとめて書けるんですね。
そうなんです。表示の欄をすっきりさせるためのしくみですよ。
合成か天然かは分からない
一括名「香料」の範囲には、合成香料と天然香料の両方が入っているので、ラベルの「香料」だけでは、合成か天然かは分かりません。


どちらも、国のしくみの中で使うことが認められたものです。合成か天然かだけで、安全かどうかが決まるわけではありません。
合成か天然かだけで、判断しないほうがいいんですね。
はい。評価のしかたを知っておくと、ラベルを見ても落ち着いて選べますよ。
気になるときはメーカーに聞く
アレルギーなどで、香料の中身を知りたい理由がある場合は、ラベルだけでは判断できません。
そのときは、商品のメーカーに、香料の中身を問い合わせるのが確実です。香料と紅茶の香りの関係は、午後の紅茶 無糖の記事でも紹介しています。
分からないときは、聞いてみればいいんですね。
そうなんです。気になることは、遠慮せずに確かめましょう。
香料が体に悪いかのよくある質問


ここまでの内容をふまえて、香料について多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
香料は体に悪いですか
食品安全委員会は、香料ごとに推定摂取量を構造クラスごとの摂取許容値と比べて評価しています。たとえば2-エチル-5-メチルピラジンは、推定摂取量が許容値の100分の1以下で、着香の目的で使用する場合は安全性に懸念がないとされています。
合成香料と天然香料はどうちがいますか
合成香料は国が指定した指定添加物で、天然香料は動植物から得られる天然の物質です。天然香料は約600品目あり、指定制度の対象外とされています。
原材料の「香料」から中身は分かりますか
「香料」は一括名なので、どの成分か、合成か天然かは、ラベルだけでは分かりません。気になる場合は、メーカーに問い合わせるのが確実です。
香料の摂取許容値はどのくらいですか
構造クラスごとに、クラスⅠで1人1日1,800μg、クラスⅡで540μg、クラスⅢで90μgです。
香料を避ければ、その成分はとらずにすみますか
成分によっては、食品にもともと含まれています。2-エチル-5-メチルピラジンは、米国の報告で、食品にもともとある量が加えた量の約800倍とされています。
香料は何種類ありますか
天然香料は約600品目です。合成香料は、個別に名前がある品目のほか、「エステル類」などの類や誘導体として18項目が指定されています。
香料が体に悪いかのまとめ


香料は体に悪いのかを、消費者庁の表示のルールと、食品安全委員会の評価指針・評価書で確かめてきました。
答えは「香料は合成香料と天然香料をまとめた名前で、国は推定摂取量を摂取許容値と比べて評価している。香ばしい香りの成分の例では、推定摂取量は許容値の100分の1以下で、食品にもともと約800倍含まれる」です。
- 香料は、食品に香りをつけたり強めたりする添加物
- 「香料」には合成香料と天然香料(約600品目)の両方が入る
- 合成香料は指定添加物、天然香料は指定制度の対象外
- 評価は構造クラスごとの摂取許容値と推定摂取量を比べる
- 香ばしい香りの成分の例は、推定摂取量が許容値の100分の1以下
- 同じ成分が食品にもともと約800倍含まれる例もある
香料という名前だけで避けても、同じ成分を食べ物からとっていることがあるというのが、今回いちばん大事な点でした。
香料のイメージが、だいぶ変わりました。
そのとおりです。名前だけで判断せず、評価のしかたを知っておく。これがいちばん大きなポイントですよ。
次に「香料」の文字を見かけたら、ほかの原材料もあわせて見てみてください。
香料が入ったアイスの栄養については、クーリッシュはラクトアイスで体に悪い?の記事もどうぞ。クーリッシュ バニラの添加物は、乳化剤・安定剤・香料・アナトー色素の4つです。




同じように一括名で書ける添加物には、酸味料もあります。酸味料は体に悪い?の記事もどうぞ。レモン果汁15gのクエン酸は約1.0gで、缶チューハイ(レモン風味)1本分とほぼ同じでした。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料と各社の発表をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの記事も、あわせてどうぞ。






本記事の香料の定義と一括名の範囲は消費者庁「食品表示基準について」(別添 添加物1-4)、天然香料の品目数は消費者庁「食品添加物に関する規制の概要」(令和8年2月末時点)、18項目の香料は消費者庁「類又は誘導体として指定されている18項目の香料に関するリストについて」、評価のしかたと摂取許容値は食品安全委員会「香料に関する食品健康影響評価指針」(2021年9月改正)、2-エチル-5-メチルピラジンの数値は食品安全委員会「添加物評価書 2-エチル-5-メチルピラジン」(2009年10月)によります(2026年10月24日確認)。余裕の倍率(540÷4.7)は成分ラボの計算です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。





