ハムやウインナー、ベーコンは、朝ごはんやお弁当に欠かせないおかずです。手軽に使えるので、毎日のように食卓に出している家庭も多いはずです。
一方で、「加工肉はがんになる」「WHOがたばこと同じ発がん物質にした」という話を耳にして、子どもに食べさせてよいのか迷っている方もいるかもしれません。
- 加工肉がなぜ悪いと言われるのか知りたい
- たばこと同じくらい危ないのか気になる
- 毎日のお弁当に入れてもよいか迷う
- 発色剤の入ったハムが心配
そこで、国際がん研究機関(IARC)と国立がん研究センター、文部科学省の食品成分表をつき合わせて調べています。
結果、日本人の平均的な量なら、がんへの影響は「無いか、あっても小さい」。むしろ気にしたいのは塩分でした。
たばこと同じと聞いて、ハムを買うのが怖くなっていました……。
同じグループに入ったのは本当ですが、意味がちがうんです。数字で順番に確かめていきましょう。
- IARCの「グループ1」の本当の意味
- 日本人が食べている加工肉の量
- ハム・ウインナー・ベーコンの塩分
- 食べる量の目安
使う数字は、国と国際機関の資料に限りました。まずは、なぜ悪いと言われるのかから見ていきます。


加工肉がなぜ悪いと言われるのか


ハムやウインナーに、すぐに体をこわすような成分が入っているわけではありません。それでも「悪い」と言われるのはなぜでしょうか。
理由をたどると、3つに分かれました。WHOの機関が「発がん性がある」と分類したこと、発色剤が入っていること、そして塩分と脂質が多いことです。
どれも、ニュースやSNSで見たことがあります。
1つずつ、元の資料で確かめていきますね。
WHOの機関が発がん性ありと分類した
2015年、WHOの専門機関であるIARC(国際がん研究機関)が、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に分類しました。
IARCの定義では、加工肉は塩漬け・塩蔵・発酵・燻製などで、風味をよくしたり保存性を高めたりした肉のことです。牛・豚・羊などの赤身肉(赤肉)は、一段下の「おそらく発がん性がある」グループ2Aに分類されました。
グループ1には、たばこやアルコールも入っています。そのため、「加工肉はたばこと同じくらい危ない」という受け取り方が広がりました。
同じグループと聞くと、同じくらい危ないと思ってしまいますね。
そう受け取るのも自然です。ただ、分類の意味は2章で確かめますよ。
発色剤が入っている
ハムやウインナーの多くには、亜硝酸ナトリウムという食品添加物の発色剤が使われています。肉の色をきれいなピンク色に保つための添加物です。
添加物という言葉だけで、なんとなく体に悪そうと感じる方も多いはずです。使える量の決まりは、3章で確かめます。
原材料に書いてあるのを見て、気になっていました。
使ってよい量には、国の基準があるんです。あとで見ていきましょう。
塩分と脂質が多い
加工肉は、塩をして味をつけ、保存がきくように作られています。そのため、生の肉より塩分が多くなります。
ウインナーやベーコンは脂質も多めです。どのくらいちがうかは、4章で生の豚肉と並べて比べます。
しょっぱいのは、なんとなく分かります。
そうですね。実は、いちばん気にしたいのはここなんですよ。
「グループ1」はたばこと同じ危険という意味ではない


IARCの「グループ1」は、がんとの関係を示す証拠がどれだけ確かかで分けた分類です。危険の大きさで並べたものではありません。
国立がん研究センターの解説でも、同じグループ1でも影響の大きさはちがうと説明されています。


世界のがんの死亡の数で比べると、加工肉はずっと少ないんですね。
そうなんです。たばこの約100万人に対して、加工肉は約3万4千人という推計ですよ。
グループ1は証拠の強さの分類
グループ1は、「がんと関係がある」ことの証拠が十分にそろっているという意味です。
どのくらい食べるとどのくらい危ないかは、別に見る必要があります。同じグループでも、危なさが同じとは限らないのです。
「確かさ」と「危なさ」は別なんですね。
そのとおりです。ここを取りちがえると、必要以上にこわくなってしまいますよ。
世界のがん死亡の推計で比べると
| 原因 | 世界のがん死亡(年間の推計) |
|---|---|
| 喫煙 | 約100万人 |
| アルコール | 約60万人 |
| 大気汚染 | 約20万人 |
| 加工肉 | 約3万4千人 |
加工肉は、たばこの約30分の1でした。同じグループ1でも、影響の大きさは大きくちがいます。
数字で並べると、ちがいがはっきりしますね。
そうですね。分類の名前より、この数字を覚えておくと安心ですよ。
毎日50g食べるごとに大腸がん18%
IARCの発表(プレスリリース No.240)では、加工肉を毎日50g食べるごとに、大腸がんのリスクが18%高まるとされています。大腸がんは、結腸と直腸にできるがんです。
ここで大事なのは、「毎日50g」という量です。日本人がふだんどのくらい食べているかを、次の章で比べます。
毎日50gって、けっこうな量ですよね。
そうなんです。日本人の平均と並べると、見え方が変わりますよ。
日本人の平均なら影響は「無いか、あっても小さい」


では、日本人はどのくらい加工肉を食べているのでしょうか。国立がん研究センターの資料で確かめました。
結果、日本人の加工肉の平均は1日13g(2013年)。IARCの数字の単位50gの約4分の1でした。


平均だと、50gよりずっと少ないんですね。
そうなんです。だから、平均的な量なら影響は小さいと考えられているんですよ。
日本人の平均は1日13g
| 1日あたり(2013年) | 日本人の平均 |
|---|---|
| 赤肉・加工肉の合計 | 63g |
| うち加工肉 | 13g |
国立がん研究センターは、日本人の平均的な摂取の範囲なら、大腸がんへの影響は「無いか、あっても小さい」としています。
日本の専門機関の見方を聞くと、少しほっとします。
ただし、平均より多く食べる人もいるはず。自分の量を一度ふり返ってみましょう。
極端に減らす必要はない
国立がん研究センターは、極端に量を制限する必要性はないとも述べています。肉は、たんぱく質などをとれる大事な食品です。
一方で、毎日たくさん食べている方は、量を控えめにするのがよいでしょう。ゼロにするより、ほどほどにするのが現実的です。
食べるのをやめなくてもいいんですね。
そうなんです。怖がって全部やめるより、量を整えるほうが続きますよ。
発色剤には使える量の基準がある
発色剤の亜硝酸ナトリウムは、消費者庁の使用基準で、食肉製品は1kgあたり亜硝酸根として0.070g以下と決められています。
国の基準の範囲で使われています。原材料に書いてあるから危ない、とは言えません。ほかの添加物が気になる方は、マルシンハンバーグの記事もどうぞ。
使える量が決まっているんですね。
そのとおりです。添加物は、名前より基準と量で見るのがコツですよ。
がんより気にしたいのは塩分


がんへの影響が小さいなら、加工肉は気にしなくてよいのでしょうか。文部科学省の食品成分表で、生の豚肉と比べました。
結果、100gあたりの食塩はロースハム2.3g、生の豚もも肉0.1g。約23倍でした。


生の豚肉と比べると、こんなにちがうんですね。
そうなんです。国立がん研究センターのがん予防法でも、「塩蔵品を控える」ことがすすめられていますよ。
100gあたりで比べると
| 100gあたり | エネルギー | 脂質 | 食塩相当量 |
|---|---|---|---|
| ロースハム | 211kcal | 14.5g | 2.3g |
| ウインナー | 319kcal | 30.6g | 1.9g |
| ばらベーコン | 241kcal | 19.4g | 2.6g |
| 豚もも肉(皮下脂肪なし・生) | 138kcal | 6.0g | 0.1g |
食塩がいちばん多いのは、ばらベーコンの2.6gでした。ハム・ウインナー・ベーコンは、どれも生の豚肉の約19〜26倍の食塩でした。
どれを選んでも、塩分は多いんですね。
そうですね。種類を替えるより、量を決めるほうが効きますよ。
ウインナーは脂質も多い
脂質は、ウインナーが100gで30.6g、生の豚もも肉の約5倍でした。カロリーも319kcalと多めです。
ウインナーは小さくて食べやすいので、つい何本も食べてしまいやすいおかずです。お弁当に入れる本数を決めておきましょう。
朝ごはんで、何本も焼いてしまいます……。
分かります。最初に食べる本数だけ出しておくと、食べすぎを防げますよ。
おつまみの加工肉も同じ
おつまみのカルパスの記事でも、塩分と脂質を調べています。ジャーキーに替えると、塩分が増えるという結果でした。
加工肉は、種類を替えても塩分の多さはあまり変わらないことが多いです。おつまみも量で考えましょう。
おつまみでも、同じことが言えるんですね。
そのとおりです。加工肉はまとめて「塩分の多い食品」と覚えておくと楽ですよ。
加工肉は1日の量を決めて食べる


加工肉を食べてはいけないわけではありません。手軽にたんぱく質がとれる食品なので、1日の量を決めて楽しむのが現実的です。
厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)では、食塩の目標量は1日男性7.5g未満、女性6.5g未満です。50g食べたときの食塩と比べました。


50gで、1日の目標量の2割近くになるんですね。
そうなんです。ほかのおかずやみそ汁にも塩分があるので、合計で考えましょう。
50gで女性の目標量の15〜20%
| 50g食べたとき | 食塩相当量 | 女性の目標量6.5gに対して |
|---|---|---|
| ばらベーコン | 1.3g | 約20% |
| ロースハム | 約1.2g | 約18% |
| ウインナー | 約1.0g | 約15% |
加工肉を食べる日は、ほかのおかずの味つけをうすめにすると、1日の合計を調節しやすくなります。
加工肉の日は、ほかを薄味にすればいいんですね。
そのとおりです。1品で全部をがまんしなくてもいいんですよ。
生の肉と組み合わせる
毎日のお弁当や朝ごはんに加工肉を使っているなら、何日かは生の肉や魚、卵に替えるのも1つの方法です。
たとえば、ウインナーの日と、豚肉の炒めものの日を交互にするだけでも、塩分は減らせます。
毎日ウインナーだったので、交互にしてみます。
いいですね。無理なく続けられる方法を選びましょう。
色が気になる方は
ハムやソーセージの中には、コチニール色素などの着色料を使った商品もあります。
気になる方は、原材料の表示を見て選ぶとよいでしょう。ただし、塩分の量は色とは関係なく、栄養成分表示で確かめるのが確実です。
色と塩分は、別に見るんですね。
そうなんです。表示の裏側の数字まで見ると、選び方が上手になりますよ。
加工肉のよくある質問


ここまでの内容をふまえて、加工肉について多い疑問にまとめて答えます。
気になる質問だけ拾い読みしてください。
加工肉はなぜ体に悪いと言われるのですか
WHOの専門機関IARCが加工肉を発がん性の「グループ1」に分類したこと、発色剤が入っていること、塩分と脂質が多いことが主な理由です。
加工肉はたばこと同じくらい危ないのですか
同じグループ1ですが、これは証拠の強さの分類で、危険の大きさではありません。世界のがん死亡の推計では、たばこ約100万人に対して加工肉は約3万4千人です。
毎日ハムを食べても大丈夫ですか
日本人の加工肉の平均は1日13gで、国立がん研究センターは平均的な量なら影響は「無いか、あっても小さい」としています。ただしロースハムは100gで食塩2.3gあるので、量を決めて食べましょう。
発色剤の亜硝酸ナトリウムは危なくないですか
食肉製品では、1kgあたり亜硝酸根として0.070g以下という国の使用基準があり、その範囲で使われています。
ウインナーとハムではどちらがよいですか
100gあたりの食塩はロースハム2.3g、ウインナー1.9gです。ウインナーは脂質が30.6gと多めです。どちらも量を決めて食べましょう。
子どものお弁当に入れても大丈夫ですか
入れてはいけないわけではありません。子どもは体が小さいぶん塩分の割合が大きくなるので、量を少なめにし、生の肉や卵のおかずと交互にするとよいでしょう。
加工肉はなぜ悪いかのまとめ


加工肉はなぜ悪いと言われるのかを、国際機関と国の資料で確かめてきました。
答えは「IARCのグループ1は証拠の強さの分類で、日本人の平均的な量なら影響は小さい。がんより気にしたいのは塩分なので、1日の量を決めて食べる」です。
- グループ1は危険の大きさではない
- 加工肉のがん死亡はたばこの約30分の1
- リスクの単位は毎日50gで大腸がん18%
- 日本人の平均は1日13gで約4分の1
- ロースハムの食塩は豚もも肉の約23倍
- 50gで女性の目標量の15〜20%
日本人の平均的な量なら、がんへの影響は小さい。気にしたいのは塩分というのが、今回いちばんの発見でした。
がんが怖くてやめようと思っていましたが、塩分を気にすればいいんですね。
そのとおりです。「グループ1」という言葉より、食べる量と塩分の数字を見る。これがいちばん大きなポイントですよ。
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次にハムやウインナーを使うときは、1日の量を決めて、ほかのおかずを薄味にしてみてください。
燻製の香りをつける添加物については、くん液の記事もどうぞ。EUは遺伝毒性の懸念から8種類の燻製香料の認可を更新せず、段階的に使えなくなります。
ステーキ用の成型肉については、成型肉の記事もどうぞ。厚生労働省は、肉片を固めた成形肉などは中心部まで加熱が必要としていて、中心部を75℃で1分間以上加熱すれば病原微生物は死滅します。
成分ラボでは身近な食品を、国の資料をつき合わせて1つずつ調べています。ほかの加工肉の記事も、あわせてどうぞ。










本記事の加工肉のリスクはIARC(国際がん研究機関)プレスリリース No.240、世界のがん死亡の推計と日本人の摂取量・見解は国立がん研究センター「赤肉・加工肉のがんリスクについて」、食品の栄養成分は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」、亜硝酸ナトリウムの基準は消費者庁の使用基準、食塩の目標量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によります(2026年10月20日確認)。50gあたりや倍率の値は、公式の値から計算しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。食事制限をしている方は、医師や管理栄養士の指示を優先してください。






